導入事例

みやまスマートエネルギー株式会社

取材日:2022.05.12 事例作成日:2022.05.17
更新日:2022.06.01

みやまスマートエネルギー株式会社 社屋

太陽光で電力の地産地消を目指す先進都市「みやま市」

博多駅からJRの快速に乗って約1時間。福岡県の南部にあるみやま市は、太陽がさんさんとふりそそぐ緑豊かな町だ。人口は約3万6千人。セロリや高菜などを産物とする、ごく普通の地方都市だ。

ただし、みやま市には、他市にない大きな特徴がある。環境政策対策に力を入れ、太陽光を中心とした再生可能エネルギーによる電力の地産地消を目指している。

2013年には、市の西部、高柳地区に5MWの出力を誇るメガソーラーを建設。家庭への太陽光パネルの設置も進め、太陽光発電の普及率は10.8%と高い(全国平均6.6%)。

2020年にはごみゼロを目標にする「ゼロ・ウェイスト」宣言、2021年には二酸化炭素などの排出量を実質ゼロにする「ゼロ・カーボンシティ」を表明するなど、先進的な取り組みを続けている。

みやまスマートエネルギー株式会社 オフィス

地域新電力の雄「みやまスマートエネルギー株式会社」とは

今回訪れる「みやまスマートエネルギー株式会社(以下、みやまSE)」も、そんな市の取り組みの一環としてスタートした会社だ。

みやまSEの誕生は、電力自由化が始まってすぐの平成27(2015)年2月。同年11月から電力の供給を開始した。地域密着型の新電力企業として、自治体新電力としては全国で初めて家庭用電力の小売をスタートさせた。

同社は、みやま市民がエコで豊かな新しい暮らしを送れることを目標とし、地域に密着した電力事業を行っている。

市が出資するメガソーラー発電会社や、市内の家庭に設置された太陽光発電システムの余剰電力を買い取り、市のうたう電力の地産地消に貢献。市役所本庁舎をはじめ、公共施設や工場などの市内民間企業に電力を供給している。

現在では、地域電力事業「みやまんでんき」と生活支援サービス・さくらテラスを融合させ、電力事業の収益を地域内に経済循環させることを目指している。

生活支援サービス・さくらテラス

みやまSEの顧客情報管理に活躍する「PowerCIS」

みやまSEで、ユーザーの顧客情報管理や電気料金支払いに活躍しているのが、株式会社スリートの「PowerCIS」だ。

PowerCISは、新電力企業向け顧客情報管理システム。新規需要者の申込受付から契約、料金メニューの設定、電気使用量の計算、請求書の作成、銀行や収納代行業者へのデータ出力、お客様のポータル(マイページ)作成と管理まで1本で行える電力事業の統合システムだ。FITにも対応している。

使いやすく、軽快な操作性を持ちながら、高度な作業にも対応できる上、コストパフォーマンスが非常に良い、といった多彩な魅力を兼ね備える。現在では国内に約700社ある新電力企業のうち、PowerCISを導入する企業は100社を超える。実に約15%がPowerCISを使用している計算になる。大阪の中小企業のパッケージソフトが、なぜ選ばれるのだろうか。

その点を、みやまスマートエネルギー株式会社戦略企画部・部長の鶴氏に伺ってみた。

「PowerCIS」を知ったきっかけは?

―みやまSEスマートエネルギー様ですが、弊社PowerCISをお知りになったきっかけはいかがでしょうか?

2015年の創業当時は、別のシステムを使っていました。現状ではシステム費用がけっこうかかっていたので、そこを抑えたいという気持ちがありました。また、ポータルのサービスが貧弱だったんですね。その条件をクリアするシステムを探していたところ、PowerCISに出会いました。

CISシステムを公募した結果、このシステムがバランスもとれていてポータル機能もあり、良さそうだという結論に至りました。それで、最終的に決定したんです。

PowerCISの魅力とは?

―PowerCISを導入してみて、実際の使い勝手はいかがですか?

コストパフォーマンスが抜群でした。地域電力は顧客規模も限られますが、PowerCISはシステム費用が低価格で、導入しやすいと感じました。また、カスタマイズができて柔軟性が高かったのも魅力です。弊社では市の水道料金請求とのセット請求を行っています。そうした独自の請求発行に対応する場合に、システムの自由度が備わっていたんです。

また他の需給管理システムとの顧客情報の連携が自動化できる点も魅力でした。他のベンダーシステムでは、けっこうデータ移行を手動で行ったりすることがあるので、自動化されていると大変助かります。

顧客ポータルサイト機能も便利ですね。請求書のウェブ化や30分データの提供ができる点も良かったです。ポータルの中に、ある電力量に達したらアラームを出す機能がありますけど、これをお客様の節電PR用にして、「使いすぎたら警報が出ますよ」と。どれだけ活用されているか分からないですけど、弊社の特徴として出しています。

―法人向けの顧客サイトはいかがですか。

以前もポータルサイトはあったんですが、個人のものに限られていました。それも請求金額が確認できるだけだったんですが、PowerCISでは請求書がそのままアップされます。法人にも使えるのではないかと、法人向けポータルも始めたら、申込が多くて驚きました。エコ割(紙の請求書を出さないでネット上だけなら割引を行うサービス)も食いつきがよく、隠れたニーズを掘り起こした気持ちです。

最近では、顧客ポータルサイトの画面が、バージョンアップの時に改善されてより見やすくなり、お客様からも好評です。バージョンアップが多く、スピーディに改善が反映されるのも、良い面だと思います。

PowerCISを利用した業務風景

PowerCISに期待する点

―今後、PowerCISに期待する機能や改善点などはありますか?

2画面を同時に起ち上げる機能が欲しいです。業務では、作業をしている時に、同時に別の画面で調べたい場合があります。そういう時に2画面が同時に立ち上がると便利です。

あと、今の時代的には「デマンド・レスポンス」(電力の需要供給を調整するために、需要家の電力消費を抑えること)に対応する機能でしょうか。経産省からも問い合わせが来ますが、電力がひっ迫した時に、基準を決めて「この時間帯ひっ迫するので、電力を抑えてください」っていう一斉メールを発信したいわけです。そういうメールを送れる機能や30分データの実績により割引く機能がほしいですね。

細かいところでは、顧客一覧、契約一覧などに、電話番号でも検索できる機能もほしいですね。顧客名などだけでは、文字の間違いで検索できない場合もあるので。電話番号なら確実です。

あれ? こんな機能もオプションであったんですか!

「市場連動型プラン」と「太陽光発電買取の検針票作成」

―他に必要な機能はありますか?

料金メニューの「市場連動型料金」ですね。一般家庭や企業などでは、電気料金の高騰で問題視しているところもありますが、特殊な用途では使えます。たとえばEV(電気自動車)。九州では、5月くらいから晴れれば太陽光で電気料金が0.01円/kWhに低下したりします。そういう時にできるだけ充電してほしいので、市場連動型料金で需要を喚起することに活用できます。

―「市場連動型メニュー」はPowerCISでもオプションとして用意しております。ぜひご利用いただければと思います。

また、太陽光発電買取の検針票を作成する機能もあればいいですね。弊社では、発電者の方に対して、発電量に応じて電気料金から割引しているので、相殺できる機能があれば一番いいです。

―発電買取についても、やはりPowerCISでも「FIT」機能、「買取」機能としてオプションとして用意しております。これもまた、ご利用ください。

今の電力業界について

―今の電力業界についてはどうお考えですか?

今(2022年5月)は、エネルギー価格の高騰から電気料金が高くなり、最悪の状況です。今年が一番厳しいかもしれないけれど、今年乗り切っても来年も厳しい状況になるでしょう。そういう状況下なんで、どうやって今を乗り切るかを常に模索しています。

ただ順風満帆ではないですが、もともと世の中には「再エネが拡大すると電気料金が高くなる」という考えはありました。ですから、その状況がいち早く来た、とも考えられるんです。でも、こんな極端に上下するんではなくて、やがてある程度バランスを取った上で、安定的な形になってくれればいいかなと思います。

―九州は首都圏に比べて、そんなに悪くなってはいないとも聞きますが。

九州は、太陽光発電が拡大しているので、西日本の中では別格で、JPEX価格も一段低くなっています。そういう意味では、九州は恵まれた場所であると思っています。九州で小売事業をやっているから救われている、と言われる事業者さんもおられます。

今後の抱負

―今後についてはいかがでしょうか?

やはり会社の設立当初の目的としては、再エネ拡大での脱炭素です。最終的には、それでバランスのとれた形を実現するのを目指しています。それを実現していくためにも、太陽光発電の買取機能やデマンドレスポンス、市場価格を反映した連動型プランで、PowerCISのお力も借りることをお願いしたいと思います。

今は、小売電気事業者にとって、小売価格に対して電源原価が高くなるという異常な状況です。エネルギー問題に向き合いながら脱炭素をどう推進していくかが大きな課題だと思っています。

―どうもありがとうございました。御社とみやま市の発展のために、弊社のPowerCISがお力になればと思います。本日はどうもありがとうございました。

●取材協力

代表取締役:横尾健一氏

みやまスマートエネルギー株式会社

平成27(2015)年2月創業。地域密着型の新電力企業として、全国初の家庭用電力小売をスタートした。みやま市内の太陽光発電などの再エネを地産地消し、人口減少などの地域課題を解決することを目標としている。