お役立ちコラム

「卒FIT」の今後の動向について

■FIT(固定価格買取制度)とは、何でしょうか?

 卒FITを説明する前に、まずFITの説明を行いましょう。
 「FIT(固定価格買取制度)」とは、太陽光発電などの「再生可能エネルギー」による発電を推進するため、再生可能エネルギーで発電された電力を高水準の固定価格で、しかも全量を電力会社が買い入れるよう定めた制度です。
 ちなみに「再生可能エネルギー」とは、化石燃料を使わず二酸化炭素などの温室効果ガスの発生が少ないため、環境に優しいエネルギーです。太陽光発電をはじめ、中小の水力・地熱・風力・バイオマス(家畜のふんや残さなどからのメタンガス、植物チップなどを利用した発電)発電が含まれます。

 FITは、前身の制度である「余剰電力買取制度」が2009年からスタートしました。当時は太陽光発電のみが対象でしたが、2012年に他の再生可能エネルギーにも対象を広げ、また発電分全量買取りとなり(住宅用など10kW未満の太陽光発電は余剰分のみ買取り)、現在のFITとなりました。

 余剰電力買取制度は2009年の施行当初、買取価格が1kWhあたり40円以上という高額であったため、小規模の太陽光発電を行っている一般家庭も含めて応募者が殺到。2009年の11・12月分だけで約53万件の契約が成立しました。その後、徐々に買取価格は下がり、現状では1kWhあたり20円程度に下がっています。
 なお、固定価格買取制度には契約に期限があり、太陽光発電が10年、地熱が15年、その他が20年と定められています。

■「卒FIT」とは、FITの買取が終了するということ

「卒FIT」というのは、FITの契約が満了を迎えることです。
 前の章で述べた通り、「余剰電力買取制度」のスタートは2009年。契約には期限があり、太陽光発電では10年と定められています。そこで契約後10年たった今年2019年には、太陽光発電の売電を行っていた53万件、契約電力量にして約200万kWの家庭が、契約満了を迎えるのです。
 また、2019年以降も毎年20万件程度が契約満了を迎えます。累積にすると、2023年までにその数は165万件、契約電力にして670万kWに達します。

■卒FIT後の大手電力会社各社の対応

 では、これまで買電契約を行ってきた大手電力会社は、卒FITに対しどういう対応を行うのでしょうか。
 従来の電力会社は、全社が買取継続を行うと思われます。ただし、継続の場合は、買取価格はFIT契約時のような高額ではなく、電力会社が決めた額に下がります。
 2019年6月初旬現在で、北海道電力と東京電力の対応は未発表ですが、他8社は1kWh7.0円~9.0円の価格で買取を継続するとしました。さらに各社さまざまなサービスを用意し、顧客のつなぎ止めに工夫をこらしているようです。

 たとえば、東北電力は「ツナガル電気」として、通常の買取継続の他に、蓄電池やエコキュートの割安なリースサービス(エコキュート月々6,000円~、蓄電池月々14,000円~)を行います。また、「でんきお預かりサービス」として余剰電力を電力会社に預けておき、必要なときに自宅や離れて暮らす家族が引き出して使えるサービスを提供するとしています。

 北陸電力は、定額で年間買取を行う「あんしん年間定額プラン」(2.5~3.0kWhで年額15,000円)や、「わくわく電気預かりプラン」として余剰電力を昼間や夜間で差額をつけて会社が預かり、他の時間帯に使ったとみなし買い取るプランなどを実施する予定です。

 中部電力では、通常の買取料金の他に、Amazonギフト券がもらえたり、イオン各店やダイエー、KOHYOなどで使えるWAONポイントが追加されたりするサービスで個性化を行っています。
 未発表の他社も、卒FITが始まる2019年11月に向けて同様のプランを発表すると見られます。

■大手電力会社10社の卒FIT対応

北海道電力
余剰電力の買取(1kWh8.0円)
買取プラン「エネモプレミアムプラン」
(北海道電力の利用者でかつ「エネモプレミアムプラン」申込者には、エネモポイント1ポイント/kWh進呈)


東北電力
シンプル買取(買取継続1kWh9.0円)
買取プラン「ツナガル電気」
・シンプル買取+リースサービス(エコキュートや蓄電池のリース)
※エコキュートで月6,000円程度~、蓄電池で月14,000円程度~
・でんきお預かりサービス(余剰電力を預け、自分や離れて暮らす家族が引き出して使える)


東京電力
余剰電力の買取(1kWh8.5円)
買取プラン「電気のお預かりプラン」※内要は検討中
(余剰電力を預かり、他の時間帯に使用したとみなすプラン)
子会社 TEPCOホームテック(株)にて「定額機器利用サービス『エネカリ』」
(エコキュートや蓄電池などを初期費用0円・月々定額で貸し出すサービス)


北陸電力
かんたん固定単価プラン(買取継続1kWh8.0円)
あんしん年間定額プラン(2.5~3kWh 年額15,000円)
わくわく電気預かりプラン(余剰電力を預かり、他の時間帯に顧客が使用したとみなし買取る)
※例:エルフナイト10 夏季昼間16.0円・その他季昼間13.5円、夜間1.0円)


中部電力
シンプルプラン(買取価格1kWh7.0円)
プレミアムプラン(買取金額〈翌月の電気料金充当〉1kWh8.0円)
Amazonギフト券プラン(Amazonギフト券と交換。1kWh8.1円)
WAONプラン(買取〈電気料金充当〉1kWh7.0円+WAONポイント1kWh2ポイント)
再エネスマートプラン(使用時間帯に応じた価格で買取り、翌月の電気料金充当1kWh7~12円)


関西電力
余剰電力の買取(1kWh8.0円)
買取プラン「貯めトクサービス」※内容は検討中


中国電力
余剰電力の買取(1kWh7.15円)
買取プラン「ぐっとずっと。グリーンフィット」※内容は検討中


四国電力
余剰電力の買取(1kWh7.0円)
買取プラン「ためトクサービス」
・ためトク割(150kWh/月まで預かった電力料金を割引)
・割増買取制(150kWh/月を超えた余剰電力を1kWh8円で買取る)


九州電力
余剰電力の買取(1kWh7.0円)
お預かりプラン ※内容は検討中
「蓄電池・エコキュート設置会社」の紹介(九州電力グループ会社)


沖縄電力
余剰電力の買取(1kWh7.5円)
FIT(固定価格買取制度)の今後は? 政府(資源エネルギー庁)の対応


 資源エネルギー庁では、卒FITに具体的な策を提示しているわけではありません。
 買取期間終了を迎えた太陽光発電家庭には、蓄電池などを利用して、電力の自家消費を増やすことを推奨しています。
 太陽光発電は、昼間しか発電できません。昼間自分の家で使う電力以外に余った余剰電力を蓄電池に貯めておき、夜間はそれを利用し、加えて電力会社から購入した安い夜間電力を併用するという方法で、電気代の節約が可能です。
 資源エネルギー庁が推奨する、自家消費の方法は次の通りです。

■蓄電池を購入して、昼間蓄電した余剰電力分を夜間に使う。

夜間は電力会社からの夜間電力を利用し、電力料金の低減を行う。
蓄電池だけでなく、蓄電池機能を持つ電気自動車なども利用して自家消費を増やす。
 なお、経済産業省では、FIT賦課金などで国民の負担が増えているとして、今後は制度を抜本的に見直し、FIT(固定価格買取制度)を終了する方向で調整を行っています。
 FITの終了により、50~100kWを超える中・大規模の太陽光や風力事業者は、電力卸市場での電力販売を求めたり、自ら販売先を見つけることになります。ただ、卸市場での販売で価格が急落するなどで基準価格を下回った場合は、国が赤字分を補填するとしています。
 小規模の太陽光発電を行う家庭などに対しては、買取制度は残すものの、自宅で消費した余剰分のみの買取となるようです。
 経済産業省では、2020年にも法改正案を提出するとしており、今後も動向が注目されます。

■各小売電気事業者などの新サービスは?

 一方、新電力企業は卒FITに対してどんな対応を行っているのでしょうか。
 卒FITは、電力自由化により新規参入してきた小売電気事業者、つまり新電力企業にとっては、顧客を増やす大きなチャンスともいえます。
 新電力企業の対応のひとつとして、自社の電気契約とセットにする代わりに買取価格を高めに設定し、競合する大手電力会社との差別化を図ることが挙げられます。また、卒FITする家庭や企業から買い取った電力をJEPX(日本卸電力取引所)に販売し、利益を得ようとする企業も見られます。
 その他、ハウスメーカーなどでは、自社の住宅のオーナー向けに買取りを提案。自社や関連会社の電力として使用し、RE100を目指す動きなどが見られます。(「RE100」とは、事業を行うためのエネルギーを100%再生可能エネルギーでまかなうのを目標とする運動です。アップル、イケアなどの海外大手をはじめ、日本では積水ハウス、大和ハウス工業、リコーなども参加しています。)

 今後、買取契約が満了する2019年11月を前に、新電力企業のほとんどがこうした買取サービスを実施すると見られ、個性的なサービスも登場することでしょう。卒FITをめぐって参入はますます増加し、顧客獲得競争はさらに激化すると思われます。

■新電力企業の卒FIT買取サービスの例

大阪ガス
 余剰電力の買取(1kWh8.5円)
 電気セットプラン(大阪ガスと電気契約をした場合1kWh9.0円)
 スタイルプランE(大阪ガスと電気契約をし、余剰電力も大阪ガスが買取るプラン1kWh9.5円)
丸紅新電力
 専門の会社、丸紅ソーラートレーディング株式会社を新設。
 太陽光発電事業者から買い取った電力をJEPXなどに販売予定。
積水ハウス
 買取プラン「積水ハウスオーナーでんき」
 ※積水ハウスのオーナーで卒FITを迎える家庭に買電を提案。
 買取価格1kWh11.0円として関連会社で電力を使用し、RE100企業を目指す。
昭和シェル石油
 買取価格1kWh8.5円(昭和シェル石油の電気プランとセット)
スマートテック
 買取価格1kWh10円・買取保証2年間(業界最高値級と広告)