【アジャイル経営のススメ】第1回 アジャイルとは何?
作成日:2023.07.11 更新日:2023.07.11 公開日:2023.07.11
■「アジャイル」って何?
「アジャイル」。皆さんはこの言葉を聞いたことがあるでしょうか?
アジャイルとは英語で「agile」と書きます。形容詞で「素早い」とか「敏捷」などの意味で、名詞形だと「agility」となります。これも「敏捷」や「機敏」という意味です。
じゃあ、「アジャイル経営」とはなんでしょう。
「敏捷な経営」。それは、よく理解できます。
近年では、経営判断のスピードアップが求められています。迅速な判断を次々に繰り出す海外企業に対して、合議型、安全指向、「石橋を叩いて、なおかつ渡らない」経営で、いつまでたっても決定できない日本企業のやり方に批判が集まっています。実際に、日本企業や政府のトップの決定が遅いために、重要なビジネスチャンスを逃してしまった、ということがよく問題にされていました。
スピード経営は、規模の大小を問わず、これからの日本企業の大きな課題です。
企業経営者にとっては、「スピーディな経営」こそ、今一番欲するところではないでしょうか。
■従来の「ウォーターフォール型」開発とは
アジャイルは、そもそも、IT企業のプログラム開発で使われはじめた言葉です。従来のウォーターフォール型開発に対抗するもので、「アジャイル開発」として有名になりました。
ITのプログラムやシステム開発では、従来、ウォーターフォール型という手法が主流でした。
「ウォーターフォール」とは、ご存じのように「滝」です。
プログラムの開発でいうと、
(1)企画 ⇒(2)要件定義 ⇒(3)設計 ⇒(4)実装(プログラミング) ⇒(5)テスト ⇒(6)リリース(完成)
という流れで、順番に開発を行っていくことをいいます。それぞれのステップでは、完全にできているか確認してから次に進み、基本的にあと戻りはしません。
滝のように上から下、上流工程から下流工程へ順番に流れていくため、「ウォーターフォール(滝)」と呼ばれます。
この方法は、計画通りに進めていくため、どこまで進んだか、進行状況がはっきり分かるメリットがあります。後戻りはしないため、見積りや計画がしやすい点もメリットです。
多人数が関わる大規模開発に、適した手法です。
計画大好き、一度決めたら完璧を期する我々日本人が好みそうな方法ですよね。
■「ウォーターフォール型」開発の弱点
ところが、このウォーターフォール型には、重大な欠点がありました。最初にきっちり計画を決定して最後まで実行し、原則として後戻りしないため、途中での変更ができないのです。
昔は、技術の進化が今ほど早くなかったため、数年前に決めた内容でも、そのままでなんとかなりました。
ところが、最近は技術の進歩・変化が各段に速くなっています。スマートフォンでも、半年、四半期ごとにニューモデルが発売されます。OSも瞬く間にアップデートされます。
対応アプリはその度に、スピーディに対応しなければなりません。
開発途中なのに、ニューモデルが出てしまったために、急いで仕様を変えなければいけなくなる。
そんなことが日常茶飯事なのです。
従来のウォーターフォールモデルでは、とてもこのスピードについていけません。
■「アジャイル型」とは
そこで、登場したのがアジャイル型開発です。
アジャイル型という名前が誕生したのは、2001年。スピーディな開発手法(軽量ソフトウェア開発手法)を得意とするプログラマー17人が会談を行いました。そこでまとめた開発手法を「アジャイルソフトウェア開発宣言」という文章にまとめたのです。
アジャイル型というのは、小人数でスピーディに開発を行うのに適した開発手法です。
まず、開発担当者やプログラマーなどが数人程度の開発グループを組みます。
そして1サイクル2週間程度で、企画 ⇒設計 ⇒実装(プログラミング) ⇒テスト を行い、完成品をリリースします。このサイクルを「イテレーション」と呼びます。
このイテレーションを何回も繰り返して行い、徐々に製品の完成度を上げていくのです。
これなら、急に設計変更が入った場合でも柔軟に対応でき、スピーディな変更が可能です。
技術革新が非常なスピードで起きる「今」に適した手法といえるでしょう。
その一方、少人数でチームを組むため、開発の質がメンバー頼みになりやすい。何回も修正を繰り返すため、どこが最後の完成か決めにくい、などの課題もあります。
そんな課題があるにせよ、今の少人数での開発では、欠かせない手法となりつつあります。
■「アジャイル型」を経営にとり入れよう
「アジャイル型経営」というのは、このアジャイル型の開発手法を、経営にとり入れようという考えです。
経営者の方々は、定まった経営理念を持ち、毎年の年次計画書を作成されているでしょう。
でも、その見直しは行っているでしょうか。経営計画書を期首に作成したままに、なっていませんか。 計画は立てたけど、思った通りに行かなかったと感じることの方が多くないでしょうか?
そこで、アジャイル開発の手法を取り入れるのです。
アジャイル開発の方法は、簡単にまとめると、トライアルアンドエラーで開発を行っていくこと。この考えを経営にも取り入れていきましょう。
当然ですが、練りに練った計画書でも、1年に1度きりの見直しでは、経営のスピードが遅くなってしまいます。また状況の変化により、大きくブレることもあります。
大きな計画は期首で立て、3か月ごとに見直して軌道修正をし、次の3か月後を予想・目標を立てていくのです。
それを繰り返すことで、変化に対応する経営ができていくのです。経営理念はぶれてはいけませんが、計画は常に変化させるべきであり、状況に応じながら進める必要があります。
良い時も悪い時もある。そのつど振り返り、点検しながら軌道修正して、次の3か月に向けて進めていく。
どうでしょうか。1年先は予想しづらくても、3か月先の経営状況は比較的、想定しやすいのではないでしょうか?
ですから、3ヶ月ごとに計画を立て直し、3ヶ月単位でスタッフに変更を伝えていくのです。
どうでしょうか。こうすることで、経営の柔軟性を維持でき、急激な状況の変化にも対応できる、強靭な会社作りが実現できるのです。
あなたの会社も、こうしたアジャイル経営に変えていきませんか。
このコラムでは、そうした経営手法のいろいろをお話していきたいと思います。