お役立ちコラム

【電力コラム】倒産・廃業は一服か。新電力会社の現状

 さて、2024年、日本の新電力事業者(新電力)の数はどう推移したのでしょうか。
ご存じの通り、日本には「旧一電」と呼ばれる、戦後すぐに電力事業を占有的に行ってきた大手電力会社がありました。北海道・東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州・沖縄の10社です。
 戦後は一般の需要家は電力をこの10社からしか買うことができませんでした。ところが、2016年4月からスタートした電気事業の自由化で、どの会社も申請すれば電気を販売できるようになりました。それに合わせて、需要家(一般のユーザー)も、自由に電力会社を選べるようになりました。各社は電気料金の安さやサービスを競い、またたく間に新興の電力会社(新電力)が増えるようになったのです。
 2025年1月時点で、資源エネルギー庁に登録を行っている小売電気事業者は749社。大手電力会社10社なども含まれていますから、実質はもっと少なくなります。各社は、電気料金の安さや再エネ電力専門、地域密着などのサービスによって、大手電力会社から差別化を図り、売り上げを伸ばそうと努力しています。
 
 こうして毎年のように増えていく小売電力事業者ですが、一方で倒産や電力事業からの撤退も相次いでいます。
 民間調査会社の帝国データバンクによると、2021年3月の時点で存在していた703社のうち、2024年3月まで撤退もしくは倒産した会社は、119社にのぼるとの調査を公表しました。うち、撤退は累計87社で前回の2023年より23社増。倒産・廃業は32社となり、前回2023年より6社の増加となりました。
 原因については、電力の調達価格の急激な高騰によって、需要者への電気料金より調達価格の方が高いという、いわゆる「逆ザヤ」の状況が生まれ、経営が圧迫されたことや、思う以上に新規需要家の獲得が難しかった、などの理由が考えられます。
 
 現状では、電力の調達価格は高止まりを見せているものの、2021年頃のような急激な値上がりは抑えられています。一時期のような想定外の価格変動によって電力会社が強烈なダメージを受けることは減っています。
 電気料金の値上げ改定も多くの企業で実施されていますが、「物価全体の上昇」という世間一般のイメージに合わせた形になっており、以前のように目立ってはいません。
 業界全体では、徐々に落ち着きを取り戻している、という形ではないでしょうか。
ただし、エネルギー全体の調達価格が下がったわけではなく、依然として高水準のまま推移しています。2023年からは、安定的な電力供給を確保するため「容量拠出金」を各電力会社が負担することも実施されており、料金がさらなる値上げ圧力にさらされています。
 今後は、安定した利益確保と収益向上のため、新電力各社がより一層の知恵を絞る必要があります。