お役立ちコラム

キニナル・コトバ 第16回「ダイヤモンド半導体」


 これまた豪勢な言葉がやってきました。「ダイヤモンド半導体」。半導体と言えば、まず思い浮かぶのがシリコンです。シリコンの性質を利用し、コンピュータの心臓部に使われるCPUなどに利用されます。
 その半導体素子にダイヤモンドを使うというのでしょうか。いったいどのようなものなのでしょう。

■「半導体」とは

 ダイヤモンド半導体の説明に行く前に。そもそも「半導体」とは、何なのでしょうか。
 半導体は、電気を良く通す金属などの「導体」と、ゴムなどほとんど電気を通さない「絶縁体」の、ちょうど中間くらいにあたる物質です。シリコンなどが半導体として有名です。
 半導体は、電気を通したり通さなかったりする物質です。おおむね、半導体は低温の場合は電気を通さず、高温になってくると電気を通す性質があります。
 この変わった性質を利用して、トランジスタが発明されました。トランジスタは2種類の異なる半導体を挟み込んで貼り付けて作られた装置で、電気を増幅したり、スイッチングを行うことができます。
 この中の特にスイッチング機能を利用して、たくさんの半導体を集めた集積回路を作り、コンピュータに利用するようになりました。これがパソコンの心臓部であるCPUなどです。
 こうした半導体の中で、シリコンの代わりに、半導体素子になんとダイヤモンドを使っているのが「ダイヤモンド半導体」なのです。

■「ダイヤモンド半導体」とは

 ダイヤモンド半導体の特徴は、これまで半導体に使われていたシリコンやガリウムなどに比べて、30倍以上の高電圧に耐えられる点です。しかも従来のものに比べて数十倍から数百倍の高速で動作し、かつ高い周波数でも動きます。発熱もしにくく、熱伝導度はシリコンの15倍以上。また、宇宙などの放射線量が高い場所でも故障しません。
 次世代半導体の中でも、飛びぬけて高性能なのです。
 非常に高性能な半導体が作れるとあって、「究極の半導体」と呼ばれてきました。主に電気自動車や、原子力発電所、宇宙空間で、大きな電流や電力を扱う「パワー半導体」としての利用が期待されます。
 しかし、半導体製造のためには、ホウ素やリンなどの不純物を添加する「ドープ」という工程が難しく、また、保護膜を張る「パッシベーション」という工程も非常に難しく、失敗が続いてきました。
 ところが、2021年に佐賀大学理工学部の嘉数教授が、ダイヤモンドに二酸化窒素を添加する技術を確立。パッシベーションに関しても、真空で酸化アルミニウムの膜を張る方法を発見しました。
 これにより、ダイヤモンド半導体デバイスの開発に成功したのです。

■課題も、だが期待が大きいデバイス

 ただ、実用化についてはまだ課題も残ります。ひとつは稼働時間。一般に、実用化には100万時間の連続稼働が必要とされるとのことですが、まだ190時間の実績しかありません。
 しかし、実現性への道のりがついたことに対して、業界の期待は非常に高いものがあります。
 早稲田大学発のスタートアップである、パワーダイヤモンドシステムズは、ダイヤモンド半導体の研究拠点を北九州に設置。早期の実用化を目指します。
 また、札幌市の大熊ダイヤモンドデバイスは、福島県に工場を建設し、2026年末にも稼働する予定です。ここで開発されたダイヤモンド半導体デバイスは、東京電力HDの子会社とも連携し、福島原発の廃炉に使われる機器に搭載される予定です。
 こうして、大きな期待を背負って開発が続けられているダイヤモンド半導体。停滞が続く日本の製造業の中で、輝く光となってほしいと期待します。