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【電力コラム】最近、浸透してきたインセンティブ型DR

■ついに東京では、8月のすべての日が「真夏日」に

 今年、2023年の夏、非常に暑い日が続いています。
 いや、「2023年の夏も」と書くべきかもしれません。東京では、ついに8月のすべての日が真夏日(最高気温30度以上)になったということです。毎年暑く、その記録が毎年更新されていくという大変なことになりました。
 こうしたことで、夏の電力使用量も非常に高い水準をキープしています。各電力会社の発電能力維持の努力や、また一般需要家の節電協力などで、なんとか電力需給ひっ迫警報が出るような事態は回避されています。しかし、電力使用量が非常に多い状況は変わっていません。
 ※「電力需給ひっ迫警報」とは、翌日の電力供給予備率が3%以下になると予測される時に資源エネルギー庁から発令される警報です。

 そこで、最近では、節電に向けての試みが、威力を発揮しつつあります。その一つが、「インセンティブ型デマンド・レスポンス(DR)」です。

■「デマンド・レスポンス(DR)」とは

 デマンド・レスポンス(DR)とは、電気を使う消費者側が、電力使用量を増やしたり減らしたりして、調整を行うことです。電力使用量を減らすことを「下げDR」、電力使用量を増やすことを「上げDR」といいます。
 このコラムでも何度か書いていますが、電力は発電する量と使う量(需給バランス)を常に一定にしておかなければなりません。このバランスが崩れると、電気の周波数が変動し、機器が動かなくなったり、最悪の場合、停電が起きたりします。
 電力会社では、電力の需給を一定に保つために、発電所などに連絡して、発電量を調整したりしています。
 その一方で、電力を使う消費者の側で、節電したり、逆に使用量を増やしたりして調整することがあります。それがデマンド・レスポンスです。

■デマンド・レスポンスの代表的な方法

 デマンド・レスポンスにはいろいろな方法があります。その中でも、電力需要を抑える方法では、次の2種類が代表的です。
(1)電気料金型デマンド・レスポンス
(2)インセンティブ型デマンド・レスポンス(ネガワット取引)

(1)の電気料金型デマンド・レスポンスは、電気使用のピーク時に電気料金をわざと値上げすることで、電力使用量を抑えることです。
 比較的簡単にできる方法で、その料金メニューを選択したすべての需要家を対象にすることができます。ただし、必ずしもすべての需要家が使用量を下げてくれるとは限らず、効果が確定しない、というデメリットがあります。
(2)のインセンティブ型は、電力会社と需要家が、あらかじめ節電する契約を結んでおき、「電力会社から要望があった時間帯には節電を行い、その分の対価を得るというものです。
 「ネガワット取引」と別名が付いているように、1w節電したら、1w発電したと同じとみなし、1w分の料金を払う(ネガワット)という考え方です。契約を行うため、確実に効果が見込めますが、その一方でどれだけの需要家が契約してくれるか未知数で、仕組みを作る手間もかかります。

■最近人気の「インセンティブ型DR」

 このうち、最近定着しつつあるのが、(2)のインセンティブ型デマンド・レスポンスなのです。(1)の電気料金型はやや強引なきらいもあり、需要家の同意も得にくい面があります。
 そこで、契約式のインセンティブ型が増えてきているのです。
 
 インセンティブ型の方法としては、
 まず、実施期間を7月1日から9月30日というように決めます。そして、6月くらいから申込期間を設け、節電を行ってくれる需要家を募集します。
 節電を行う時間は、一例として夕方の17時から19時まで。
 この時間帯は太陽が沈むために、太陽光発電ができなくなって電力が不足する上、まだ暑さが引いていないため、エアコンの使用量が減りません。供給量が少なく、需要量が多いままという、一番バランスが悪い時間帯なのです。
 この時期に節電を行ってくれた家庭や事業者には、1kWhあたり数ポイントのポイントが加算されます。
 ポイントは、実施期間後に合計され、支払われます。
 付与されたポイントは、電気料金から引くこともできますし、ネットショッピングなどにも使うことができます。

 「ネガワット取引」や「デマンド・レスポンス」などというと、難しい考え方のように思えます。
 しかし「ポイント節電型」などというと、分かりやすいのではないでしょうか。
 このような形で、デマンド・レスポンスは確実に、一般に広がりを見せつつあります。
 あなたもすでに始めておられるでしょうか。自宅で電力会社のサービスを確認してみてください。