各国の電力自由化状況

ヨーロッパ

EUの電力事情

ヨーロッパ諸国の電力自由化はEUの先導で

 ヨーロッパ各国では1990年代後半から電力自由化が積極的に進められました。
 欧州で電力自由化が進んだ背景には、EU(欧州連合)の電気事業制度改革があります。
 欧州の統合を目指して1993年にEC(欧州共同体)から発展的に設立されたEU。1993年の設立時には加盟国がベルギー、ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、英国、デンマーク、アイルランド、ギリシャ、ポルトガル、スペインの12ヶ国でしたが、現在は旧東欧諸国なども加え、28ヶ国に拡大しています。
 EUが目指す統合には、欧州加盟各国の経済的な統合をはじめ、域内のさまざまな障壁の解消のひとつに、電力の自由化があります。
 ヨーロッパ各国の自由化政策の進展は、EUの発した指令に基づくものが多くあります。ここでは、EUの電力市場自由化の動きを簡単に解説してみましょう。
 EUの電力自由化の基礎となったのは、EU市場統合の一環として1987年に欧州委員会が提唱した「域内エネルギー市場構想」です。この構想では、文字通りEUの域内の電力・ガスなどの市場を統合し、自由にエネルギー取引ができることが目標とされました。

EU諸国の電力自由化を進めた「EU電力指令」

 1996年には、第一次EU電力指令が出され、EU加盟国は2003年までに「発電部門の自由化」を行うことが規定されました。新しい発電設備の建設については入札制か許認可制を導入するということです。また、発送電一体の企業については、発電部門と送配電部門の会計を分離し、内部で補助することを禁止しました。
 2003年の第二次EU電力指令では、2004年7月以降、家庭用以外のすべての需要家に対し、電力自由化を実施することが定められ、さらに2007年7月以降には、家庭用を含むすべての需要家に電力自由化を実施することが定められました。また、送配電部門などのネットワーク部門の法的分離が求められ、発電部門と送配電部門を別会社にすることが義務づけられました。
 2009年の第三次EU電力指令では、さらにネットワーク部門の所有権分離(関連会社や系列の解消など、資本関係を含めた別会社化)が求められました。ただ、フランスやドイツの反対を受け、資本所有は可能な機能分離も認められる形で決着を見ました。
 こうして、EU域内では、世界に先駆けた電力の自由化が行われてきました。自由化によって、E.ONやエンジーなど世界規模の巨大エネルギー企業が成長し、市場の寡占体制が生まれたり、フランスのように並行して規制料金を残したため、実質上自由化が進展していない国などもあります。また、イギリスやドイツのように電力自由化によって、電気料金が逆に高騰した国などもあり、自由化によるさまざまな問題点も浮かび上がってきています。
 しかし、EC諸国の先行性や法的な整備、自由化によって浮上した問題点の数々は、今後本格的に自由化が進められていく日本でも学ぶべき点が多いのではないでしょうか。今後も継続したリサーチが望まれるところです。

【参考資料】