各国の電力自由化状況

ヨーロッパ

イギリス

大英帝国の栄光を残す、先進国の中核メンバー

 イギリスは、正式名称を「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」。イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4ヶ国の連合王国です。かつてはオーストラリア、インド、香港など世界に植民地を有し、大英帝国として君臨しました。
 イギリスは日本同様の島国で、日本の3分の2ほどの面積(24.2万㎞2)に6,565万人(2016年)が暮らします。名目GDPは2兆8,286億ドル(2018年)で世界5位、ヨーロッパではドイツに次いで2位。1人あたりGDPも39,735ドルと高水準です。首都ロンドンは、世界の金融センターとして世界一の取引高を誇ります。
 G7、G20の参加国であり先進国の中核メンバーですが、2016年の国民投票で、EUからの離脱を決定(Brexit)。今後の経済や国際関係の方向に注目が集まります。

天然ガス中心で、洋上風力発電にも積極的と

 もともとイギリスは化石燃料の豊富な国で、自国産の石炭と北海油田の石油でエネルギー自給を達成した時期もありました。しかし北海油田が枯渇し、現在ではエネルギー輸入に頼っています。
 発電容量は2016年で7,800万kWh。電源構成は天然ガス43%と原子力21%に続き、石炭9%、水力2%、石油1%、再生可能エネルギーが24%になっています。再生可能エネルギーは、風力発電と木質ペレットを燃やすバイオマス発電が主流。中でも海の上に風車を置く洋上風力発電は世界一で、2020年には国内消費電力の3分の1を洋上風力発電でまかなう目標もあります。
 なお、石炭火力については、2025年までに2酸化炭素の回収設備を備えた発電所を除いて、閉鎖することを決めています。

電力自由化の先進国

 そんなイギリスは、電力自由化の先進国です。
 電力の自由化については、1990年にまず発送配電の分離が行われました。国営のCEGB(発送電局)が分割・民営化され、発電会社3社と送電会社1社、配電部門12社が誕生。発電された電力は「強制プール市場」という卸売市場が創設され、そこで売買されることになりました。小売部門でも1,000kW以上の大口需要家が小売事業者を自由に選べるようになりました。
 その後は1999年に家庭用も含めたすべての需要家が、小売電力事業者を自由に選べるようになっています。

小売部門はビッグ6の寡占で問題も

 ただし自由化の当初は、強制プール市場がうまく機能せず、電気料金が逆に高くなるなどの問題が出たため、2001年に廃止。新たにNETA(新卸電力取引制度)が実施され、電気料金の適正化(40%ほど価格が低下)を実現しました。NETAは2005年にスコットランドを含めたBETTAに発展しています。
 現在の電力業界では、発電事業者が149社(2017年)、送電事業者が旧国営企業のナショナル・グリッド他18社に、配電事業者が24社になっています。ただし、発電事業者には実際に活動していないものも半数くらいあるようです。
 小売電気事業者に関しては、ドイツやフランスなどの巨大エネルギー企業による買収・統合が進み、ビッグ6と呼ばれる6社の寡占状態にあります。ビッグ6とは、イギリス系のSSE(スコティッシュ&サザン・エナジー)とブリティッシュ・ガス、ドイツ系のE.ON UKとエヌパワー、フランス系のEDFエナジー、スペイン系のスコティッシュ・パワーを示します。
 このビッグ6が長く料金値下げを行なわず、自由化は停滞状態にありました。ただ、近年はビッグ6以外の事業者の比率が25%に増え、料金を抑えるプライスキャップ制などの規制も登場しました。また、小売事業者を変えた需要者も60%を超えるなど、自由化の成果も見られ、今後の進展が期待されるところです。

日本企業の電力業界参入は

 日本からは、関西電力が2021年から稼働を始める世界最大の「トライトンノール洋上風力発電所」建設に資本参加したり、JERA(東京電力と中部電力が共同設立した火力・再エネ発電会社)がイギリス南東部で運転中の「ガンフリート・サンズ洋上風力発電所」の事業権益を取得するなど、再生エネ発電に関する事業参加が目立つようです。今後の進展が期待されます。