お役立ちコラム

【アジャイル経営のススメ】第5回 マズローの欲求5段階説

■社員の意欲を上げるには

 経営のスピードアップ、仕事の効率化。どんなに経営者が目標に掲げ、うながしたとしても、肝心の社員がついてこなければ、成果は上がりません。
 アジャイル経営のキモである、スピードアップ、一丸となった取り組みには、社員のモチベーションの向上が重要です。
 では、モチベーションの実態はどんなものなのでしょうか。

■マズローの欲求5段階説

 モチベーションには、人間が持つ欲求が関係しています。欲求に関しては、アメリカの心理学者、アブラハム・マズロー(1908~1970)が唱えた「マズローの欲求5段階説」が有名です。
 この説では、人間の欲求を5段階に分類し、重要度にしたがって、それらが階層構造をなしているとしています。
 この5段階の欲求とは、以下のようなものです(図も参照)。
(1)「生活生理欲求」:生きていくために必要な基本的・本能的な欲求
 食欲や睡眠欲、排せつ欲などです。これが満たされなければ、生命の維持ができない、という最低限の欲求です。動物や昆虫でも、このような欲望は持っています。

(2)「安全の欲求」:心身ともに健康でかつ経済的にも安定した暮らしをしたい欲求
 病気になったり、事故でけがをすることなく、安心して暮らすための欲求です。幼児などは、この欲求を満たすために、だだをこねたり泣いたりしますが、大人になると気持ちを抑えるようになります。

(3)「社会的欲求」:家庭や知人、会社など、社会から受け入れられたいという欲求
 いわゆる社会集団への帰属、知り合いからの愛情を求める欲求です。「帰属の欲求」とも言われます。社会的欲求が満たされないと、孤独や不安を強く感じるようになります。

(4)「承認(尊重)欲求」:他者から尊敬されたい、認められたいという欲求
 最近、SNSでもよく現れる言葉なので、ご存じの方も多いでしょう。(3)の社会的欲求にも関わってきますが、所属(帰属)する社会集団などで、他人からの賞賛を求める欲求です。地位や名誉を求める出世欲なども、ここに入ります。
 承認欲求には二通りあり、低レベルのものと高レベルのものがあります。低いレベルのものは、先ほどの出世欲のようなもので、名声や注目など、他者からの評価によって満たされるものです。それに対して高いレベルのものは、技術の習得や能力の獲得など、自分自身に対する評価がより関係してきます。承認欲求が満たされないと、劣等感などを感じることになります。

(5)「自己実現欲求」:自分の世界観や人生観にもとづいて「あるべき自分」になりたいと願う欲求
 自分の可能性の探求や、創造性の発揮など、「なりたい自分」「理想像」を目指して突き動かされている状態です。欲求のうちでも、最高レベルのものとされます。

■欲求の5段階は2種類に分けられる

 欲求の5段階は、さらに2種類に分けることができます。
一つは、組織順応型の意識や行動にあたる欲求です。「生活生理欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」の三つがこれにあたります。組織にとっては便利ですが、自立性に欠けるため、まだ「指示待ち」などのレベルを出ていきません。
 組織の指示に従い、意図に沿って行動する段階です。
 もう一つは、自立革新型の欲求です。「承認欲求」「自己実現欲求」の2つがそれにあたります。言われるままに行動しているのではなく、自立した意識を持って常に最適なものは何かを考えている段階です。
 ただ、承認欲求は他者からの評価を強く意識するため、八方美人や風見鶏的になりがちな傾向もあり、十分な自立を達成したとはいえない部分もあります。
 マズローはまた、(1)~(4)を何かの欠損を埋める欲求として「欠乏欲求」としており、(5)を「存在欲求」ともしています。

■欲求5段階説を活用して、社員のモチベーションを上げていこう

 欲求5段階説を頭にしっかり入れておくと、社員のモチベーションを上げることに役立ちます。
 自分の会社が社員に与える仕事が、いったい欲望のどの段階にあたるのか、一度チェックしてみましょう。
 提示している仕事は、高い意欲を持つ社員に対して、承認欲求を満たすものでしょうか。社会的欲求を満たすだけで、その会社に無事に所属している、という「ナアナア」の段階に陥っていないでしょうか。
 社員全員が、高い自己実現欲求を持ち、会社が提示した目標を達成するための高いモチベーションを保持しているでしょうか。
 経営者は、常にそうしたことを意識して、目標設定につなげる必要があります。
 高いモチベーションを維持することで、アジャイルのような、高い生産性を持つ作業が活きてくるのです。
 ぜひ、欲求5段階説を意識しながら、目標設定を行ってみてください。