お役立ちコラム

キニナル・コトバ 第11回「ブルー水素」、「ターコイズ水素」


「水素」。理科の授業で習ったと思います。世の中にある元素の中で一番軽いもので、元素記号はH。通常は元素が2個くっついたH2の形で、無色透明の気体として存在しています。
 無色透明の気体。
 それなのに、今回のタイトルは「ブルー水素」です。
 なぜ、無色透明の気体に、色がついているのでしょうか?

■水しか排出しないエネルギー源として、期待されている「水素」

 この水素、今、脱炭素のカギとなる資源として、注目を浴びています。水素は、水などから電気分解で作ることができ、燃やせばエネルギーとなって、電気を作ったり熱を発生したりと役に立ちます。しかも、燃やした後も水になるだけで地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しません。
 水素は、発電に役立つほかに、水素燃料電池として、自動車(水素燃料電池車)を動かしたり、エネファームなどの温水機器のエネルギーともなります。
 有益なため、各国で開発が進められており、欧米でも2050年までに最大4,700億ユーロ(約72兆円)規模の投資を呼び込むと期待されています。日本でも、2023年6月に「水素基本戦略」を改訂。15年間で15兆円の投資を行うことが定められました。

■水素の作り方

 ところで水素の作り方には、いくつかの方法があります。
 一つは「電気分解」。学校でも習ったように、水などに電気を通して、水素と酸素を作り出す方法。
 もう一つは「改質」。石炭や天然ガスなどを燃やしてガスにし、ガスの中から水素を取り出す方法です。
 この方法は工業などで、広く使われています。ただし、化石燃料を燃やすため、二酸化炭素を排出してしまうのが、悩みのタネです。
 この作り方によって、水素の種類が分けられています。それが「ブルー水素」や「グリーン水素」なのです。

■ブルーやグリーン、ピンクやターコイズ。水素、色いろいろ

 水素は、以下のように分けられます。
●「グリーン水素」・・・太陽光発電や風力など、再生可能エネルギーから電気分解で作られる水素。二酸化炭素を出さないため、グリーンとされます。
●「グレー水素」・・・石炭や天然ガスなどの化石燃料から、改質によって作られる水素です。二酸化炭素を多く発生させます。
●「ブルー水素」・・・グレー水素と同じく、化石燃料から作られる水素ですが、発生する二酸化炭素を、地中に埋め込むなどの方法(CCS)で、排出しないようにしたものです。
●「イエロー水素」(「ピンク水素」とも)・・・原子力発電による電気で、電気分解により作られる水素です。二酸化炭素は発生しませんが、核廃棄物など、別の問題が発生します。
●「ターコイズ水素」・・・天然ガスを熱分解して作られる水素です。副産物として炭素を排出し、二酸化炭素を排出せず、コストも安いというメリットがあります。ブルー水素とグリーン水素の中間のため、青緑色の宝石「ターコイズ」からとられています。
●「ブラウン水素」・・・化石燃料のうち、特に石炭から改質によって作られる水素を、ブラウン水素と呼ぶことがあります。グレーより暗いので、ブラウン(茶色)と呼ばれます。

 こうして、さまざまな色の名が付けられた水素ですが、さまざまな定義があるため、混乱も生じています。
 たとえば、「イエロー水素」は以前から原子力で作った水素を指すものでした。しかし、団体によっては、太陽光発電で作った水素を「イエロー水素」と呼び、原子力で作られたものは「ピンク水素」というところもあるようです。また、バイオマス発電の電力で作られた水素を「イエロー水素」と呼ぶ場合もあるようです。
 さらに、製鉄などの工程の副産物として生じる水素を「ホワイト水素」と呼ぶ場合もあります。

 こうして、さまざまな呼び名が乱立しているようですが、名前にこだわらず、できるだけ二酸化炭素を出さない方法で作られる「グリーン水素」が増えていくことを期待するばかりです。