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【電力コラム】東証でカーボン・クレジット市場スタート


 2023年10月11日、日本取引所グループ(JPX)の東京証券取引所で、カーボン・クレジット市場がスタートしました。昨年の2022年9月から今年2023年1月まで、実証実験が行われていたものが、本格的スタートとなったものです。
 この市場、二酸化炭素の排出削減量を、証券にして取引するものです。日本だけでなく、世界でも取引が活発化しているこのカーボン・クレジット、いったいどのようなものなのでしょうか。

■「カーボン・クレジット」とは

「カーボン・クレジット」とは、二酸化炭素の排出削減量を取引する制度です。
 二酸化炭素の排出量を、証券のようなものにまとめ、金銭で売買します。
 再生エネルギーで発電したり、省エネをしたりして二酸化炭素を削減した企業や団体は、政府発行のカーボン・クレジット「J-クレジット」を入手することができます。  
 一方で、二酸化炭素を発生させている企業などは、「J-クレジット」を購入すれば、二酸化炭素を削減したと同等に見なされるわけです。
 こうした取引は、これまで企業や団体同士の間で直接行われてきました。それを、証券取引所のようなものを作って、株券のように売買するしくみを作ったのが、「カーボン・クレジット市場」なのです。

 二酸化炭素の排出量は、政府が2020年に宣言した、2050年までの温室効果ガス実質排出量ゼロ(カーボン・ニュートラル)を目指して、削減していかなくてはなりません。
 しかし、業種によっては、削減がしにくいところもあります。たとえば、航空業界は二酸化炭素を排出するジェット燃料の代替物を見つけることは難しく、製鉄業なども、どうしても石炭や天然ガスなどの化石エネルギーに頼らざるを得ません。そうした企業がカーボン・クレジットを購入すると、「これだけの二酸化炭素を削減した」というのと同じことにできるわけです。

 この排出量削減は、単なる目標ではありません。カーボン・ニュートラル、二酸化炭素削減は全世界が等しく抱えている課題ですが、企業取引にも今後、大きな影響が出てくるのです。
 たとえば全世界で「RE100」と呼ばれるプロジェクトが進行しています。これは、仕事に使う電力のすべて(100%)を再エネ由来にすることを目標にする企業の集まり。IKEAやappleなど、世界的な大企業をはじめ、日本でもソニーやイオンなど数多くの企業が参加しています。
 これらの企業から仕事を受注する場合、カーボン・クレジットがあると、自社の二酸化炭素削減努力を聡明できます。カーボン・クレジットが仕事の成否にも関わってくるのです。

■日本の「カーボン・クレジット市場」

 カーボン・クレジット市場で取引される「J-クレジット」は、国が認証するもので、企業や団体が省エネ設備を導入したり、再エネ利用、森林管理を行ったことで二酸化炭素削減量を計算。削減した二酸化炭素1トンあたりいくらで「クレジット」として提供されます。
 市場で売買が行われるのは、取引所の休業日以外。土日と祝日が休みですから一般的な「平日」が取引日です。注文受付時間は午前9時~11時29分と、午後0時30分~2時59分。
 注文の方式は指値注文のみで、値段を決めずに売買する成行はありません。
 約定の方法は、11時30分と午後3時、1回ずつの節立会となり、価格優先で決められます。取引単位は二酸化炭素1トンで、呼値の単位は1円です。

■今後は

 カーボン・クレジット市場は、海外では非常に盛んですが、日本ではスタートについたばかり。カーボン・クレジットの制度自体も、まだ十分整備されているとはいえません。
 開催初日の取引量は、二酸化炭素3689トン。約定価格は、再生可能エネルギー(電力)が1トン当たり3,060円、再生可能エネルギー(熱)が2,480円、森林が7,000円でした。
 今後、しっかりとニーズが高まり、取引量が増えていくのか。新しい市場を注視して見ていきたいと思います。