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【電力コラム】アフリカの電力事情(2)


弊社が出版している書籍『電力のキホンの本』第1版、第2版には、「海外の動向」という、外国の電力事情をまとめた人気コーナーがあります。ヨーロッパや北米、アジア中心に27ヶ国の状況をまとめたものですが、アフリカと中南米、アラブ諸国は登場していません。
 そこで今回は前回に続き、アフリカ各国の電力事情を見てみたいと思います。

■エジプト:ガス田の発見により発電の8割が天然ガスに

 エジプトは、アフリカ大陸の北東の端にあり、国土面積が約100万㎞2と日本の約3倍。1億425万人(2021年)の人口を持ちます。首都はカイロで、国土の中央を「母なる」ナイル川が流れ、四大文明のひとつを育んだ土地、ファラオの墓であるピラミッドとスフィンクスで知られます。また、今戦闘が起きているイスラエルやパレスチナのガザ地区と国境を接しています。
 2011年にアラブ諸国で次々に起きた民主化運動「アラブの春」では、エジプト革命と呼ばれる運動で当時のムバラク大統領が辞任しました。しかし軍の介入が起きて民主化運動は挫折。現在は選挙が行われていますが事実上の軍政が続いています。
 エジプトのGDPは3,632億4,500万ドルと世界32位。石油と天然ガスの産出が多く、2015年に地中海で発見された巨大ガス田により、自国での石油・天然ガス自給率は90%を超え、2023年より石油製品の輸入を停止する予定です。
 電源構成は、従来はナイル川の水力発電や石油火力が中心でしたが、上記のように地中海で天然ガス資源が開発されたことで、天然ガスが77%とトップ。続いて石油13%、水力7%、風力2%、太陽光1%の順となっています。水力発電の多くは、ナイル川のアスワン・ハイ・ダムとアスワンダムから供給されています。
 エジプトは電源構成の多様化を目指しており、2030年には原子力発電の比率を9%にすることを目標としています。2015年にロシアの協力で、エジプト北部に原子力発電所を建設することで合意。2021年には建設にゴーサインが出ました。
 また、再エネに関しては2014年に太陽光・風力の固定価格買取制度(FIT)を開始しています。
 
 エジプトの電力産業では、国営のEEHC(エジプト電力ホールディングス)が発送配電を独占しています。EEHCは6社の発電会社と1社の送電会社を持ち、9社の配電会社を有しています。発電のみに関してはIPPの参入が可能になっています。
 電力は、2011年の民主化運動以降、不足状態が続きました。しかし、現在は発電所の増設などで持ち直し、電力のヨーロッパへの輸出なども行うようになっています。
 政府では、2035年までに風力発電所を開発するなどし、再エネ比率を42%まで高める目標です。

■ケニア:9割が再エネ発電。原動力は地熱

 ケニアは、アフリカ大陸の中央東に位置する国で、南東部はインド洋に面しています。面積58万㎞2と日本の約1.5倍。人口は5,377万人です。中央部には国の名前の由来となったアフリカ2位の高峰・ケニア山(標高5199m)がそびえ、その南に首都・ナイロビがあります。また、中西部の国境近くにはビクトリア湖があり、南部のタンザニアとの国境近くからはアフリカ1の高峰・キリマンジャロ山が望めます。
 国土全体は1,100mから1,800mの高原となっており、赤道が通りますが、平均気温は年間18度程度と必ずしも高くありません。ただ、海岸やビクトリア湖沿岸は熱帯気候となっています。
 元はイギリスの植民地で、公用語はスワヒリ語と英語。共和制を敷いており、選挙で大統領が選ばれます。
 GDPは1,004億ドル(2019年)と世界68位ですが、首都ナイロビは、古くからアフリカ有数の国際都市で、国連の施設なども置かれています。産業は農業中心で、紅茶、花、果物などを始め、コーヒー輸出でも有名です。
 ケニアの電力事情は、アフリカでも非常に特徴的で、総発電量の9割が再エネ発電です。
 電源構成は、地熱が41%、水力が30%、風力が16%、火力が10%、太陽光が2%。
 地熱が非常に発展していますが、理由としては、石油や天然ガスなどの資源がほとんどなく、国土の多くが乾燥帯で水力の安定確保が難しいためです。また、アフリカを南北に縦断する巨大なプレート境界「大地溝帯(グレートリフトバレー)」が通っており、それに沿って火山活動が活発なため地熱資源が豊富。そこで1950年代から地熱の調査を開始。1981年にナイロビの北西部にあるオルカリアで第1号の地熱発電所を稼働させました。そんなわけで、地熱開発がさかんになったのでした。

 ケニアの電力産業については、発電は公営のケニア電力公社が72%、外国資本などのIPPが27%を占めます。電力供給事業では、電力会社や政府機関5つが独占していましたが、1998年の電気事業法によりケニア発電会社とケニア電力・電灯会社(KPLC)の2社に統合。また送電については、高圧送電はケニア送電会社(KETRACO)が運営しています。また、配電については発電した電力の全量をケニア電力・電灯会社(KPLC)が買い取っています。
 ケニアでは、経済成長は年7%と高いものの、住民の多くは煮炊きにまだ薪を使っている実情があります。電力は恒常的に不足しており、電化率は全国平均で85%。2022年までに電化率100%を達成するためにオフグリッド(自家発電式)の太陽光発電システムでの電力供給を進めています。また、原子力発電所も中国の協力で建設が予定されています。
 ケニアは2050年までのカーボンニュートラルを宣言しています。