お役立ちコラム

キニナル・コトバ 第23回「COP」

「COP」。ここ数日、この単語をニュースでよく見かけます。「COP」とか「COP28」、「パリ協定」などという言葉がとびかっていますね。
COPって何でしょう。お巡りさんのことでしょうか。いえいえ、もちろんそうではありません。
「国連気候変動枠組み条約締約国会議」のことです。
今度は一気に難しくなってきました。こんなに難しい言葉をあつめなくてもいいのに、という感じです。このCOP、今年は第28回で、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで、約200の国と地域の代表を集めて開催されます。日本の岸田首相も参加する意向です。いったいどんな会議なのでしょうか。

■COP(国連気候変動枠組み条約締結国会議)とは

 COPは、世界の気候変動について話し合い、変動を抑えるために取り決めを行う会議です。
 1995年、第1回がドイツのベルリンで開催されました。それ以来、毎年開催されています。
28回目の今年は11月30日から12月12日まで、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで行われます。
 もともと、「COP」という言葉自体は、条約を結んだ国どうしの会議(Conference of the parties)という意味で、いろいろな会議に使われます。ただ、現在、COPというと、一般的にはこの気候変動に関する会議のことを指します。
 それほど重要な会議なのです。

 大気中の温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素など)が増えると、地球の温度が上昇して気候が大きく変化し、夏がひどく暑くなったり、台風や洪水が発生し極点の氷が溶けるといった自然災害が発生し、また生態系などに悪影響を及ぼします。
 そこでCOPの元となった国連気候変動枠組み条約(地球温暖化防止条約)では、地球温暖化を防ぐため、大気中の温室効果ガスの濃度を安定させ、気候変動がもたらす様々な悪影響を防止するための取り組みの原則、措置などが定められました。
 そして、その地球温暖化防止条約を実行していくための会議がCOPなのです。
 COPでは、毎年、条約を定めた国々が集まり、地球温暖化防止のためにどうするかが話し合われています。
 また、気候変動に関する出展を各国が行い、自分たちが行っている温暖化防止のための発表なども行われています。全世界から4万人近くの政府関係者が集まる、大規模なものです。
 この条約のスタートは1992年。国連で国連気候変動枠組み条約が採択され、同年のリオでの「地球サミット」に155ヶ国が参加。条約に155ヶ国が署名しました。
 日本では、1993年に条約を批准しました。
 そして1995年に、第1回会議(COP1)がドイツのベルリンで行われました。

 第3回、1997年のCOP3は、日本の京都で開催されました。そこでは「京都議定書」が策定されました。京都議定書は、1990年を基準として、先進国における二酸化炭素などの削減率を各国別に決め、約束した期間内に目標値を達成することが定められました。
 具体的には2012年までに、1990年比で二酸化炭素などの排出量を5%削減するといったことです。
 先進国だけでしたが、目標に具体的な数値が記されたことは初めてです。これは、非常に大きなことでした。
 ただし京都議定書は、「中国などの途上国が大量の地球温暖化ガスを排出しているのに参加していない」などとした批判により、アメリカが批准を行わなかったことで完全な実施には至りませんでした。

 2009年にカナダのモントリオールで開催されたCOP15では、産業革命以前からの気温上昇を「2度以内」に抑えることで合意しました。ただし、途上国と先進国の間で対立が起き、具体策は決まりませんでした。
 その後、COPでは、大きな決定がなされます。それが2015年にフランス・パリで開催された第21回会議(COP21)で採択された「パリ協定」です。

■「パリ協定」とは

 パリ協定では、
(1)地球の平均気温上昇を産業革命以前(つまり工業化が行われる前)と比べて2度より十分低くし、1.5度以下に抑えるためにできるだけの努力を行う。
(2)21世紀後半には、温室効果ガスの人為的な(要するに人が行う)排出量と、森林などで吸収する温室効果ガスの量を同じにするよう、温室効果ガスを減らす努力を行う
 ということが決められました。そこで、各国がこれに従い、目標を定めることになりました。
 この協定は、世界で初めて、すべての国が参加して決められた公平な合意でした。
 協定では、主要な排出国を含むすべての国が削減目標を5年ごとに提出することが決められました。
 また、先進国が途上国の支援のための資金を提供し、途上国も自主的に資金を出すことが決められました。

 COPは地球温暖化防止に大きな役割を果たしました。しかし、2019年には当時のトランプ大統領の方針によりアメリカがパリ協定離脱を宣言。2020年に離脱してしまいます。
 ただし、2021年にバイデン氏が大統領に当選すると、即座に復帰を表明しました。現在ではまた参加国となっています。
 また、COP以外でも、アメリカが主導した「気候サミット」が2021年に開催され、日本を含む主要各国が2050年までのカーボン・ニュートラル(実質上の温室効果ガス排出ゼロ)を宣言しています。

■今回のCOP28では…曲がり角にきているCOP

 さて、今回のCOP28ですが、何が話し合われるのでしょうか。
 COP28で話し合われることは、
(1)2015年の「パリ協定」で決まった、地球の気温上昇を1.5度以内に抑える目標の進捗確認
(2)温室効果ガスの一種であるメタンの削減を、2030年までに2020年比で30%削減する
(3)再エネの導入を2030年には現在の3倍にする
(4)石炭や石油などの化石燃料への段階的廃止
(5)昨年決まった途上国を支援する「ロス&ダメージ(損失と被害)」基金の詳細の決定

 などです。
(1)は1.5度に抑える目標に向かって、各国が継続して努力を続けているか、5年に一度確認するものです。今回は初の開催となります。
(3)に関しては、最近の大きなニュースとなっています。温室効果ガスは、目標があるにも関わらず、全世界的には昨年より増えているのです。
 このままでは、温度上昇を1.5度までに抑えるという目標が達成できません。そして2023年7月には、世界の平均気温が観測史上最高になることが分かりました。
 これではいけないので、再エネの導入を2030年までに現在の3倍にするという目標が話し合われます。
 現在の日本の目標が、2030年までに1.7倍ですから、ほとんど倍の導入を行わなければならないということになります。日本は、これに同意するか、現在検討中です。

 それから(5)ですが、これは昨年のCOP27で決まった基金です。どういうものかというと、気候変動で大きな災害に見舞われた弱小国に、先進国が作った基金で補償を行う、というものです。たとえば、パキスタンでは昨年、国土の3分の1を覆う大洪水に見舞われました。
 多くの途上国には、先進各国が膨大な量の地球温暖化ガスを排出して気候変動を起こしていて、そのせいで気候災害が起きている、という不満があります。この基金の創設は前から提案されたものですが、前回のCOPでそうした批判が噴き出て、成立にいたったのでした。
 また、石炭・石油などの化石燃料の段階的廃止についても、今まさに発展しつつある途上国から批判が出ています。発展しつつある国では電力が不足しており、化石燃料による発電所の建設などを推進したいという考えが強くあります。
 そうした問題なので、前回のCOPは、先進国と途上国の間で、考え方に大きな溝があることが浮きぼりにされました。
 さらに、ウクライナ戦争、ガザ紛争など次々と起こる戦乱で、エネルギー価格が高騰したり、資材の価格上昇で風力発電所の建設がストップしたりと、温暖化の防止に足止めがかかるような事態も多数発生しています。
 国連のグテーレス事務総長は、「地球温暖化から地球沸騰化の時代が到来した」と危機感を示しています。
 今回、COPが開催されるUAEは石油・天然ガスなどの化石資源が豊富な産油国。今回はどういった議論が展開されるのか、実効的で有意義な温暖化防止の意見がまとまるのか、混乱するのか、非常に注目が集まっています。 

【参考資料】