【電力コラム】日本の発電を支えるエネルギー、LNGはどうなる?
作成日:2025.02.17 更新日:2025.02.17 公開日:2025.02.17

2025年2月、トランプ大統領が就任してから初めての日米首脳会談で、日本のエネルギーに関する大きな発言がありました。
会談後の共同記者会見で、トランプ大統領が「日本はまもなく歴史に残る記録的な量の米国産天然ガスの輸入を始める」と発言したのです。
天然ガスは、日本へは温度を下げて液体にした「液化天然ガス(LNG)」で輸入されます。輸入元はアメリカ、ロシアを含めた世界各国にわたりますが、LNGは日本の発電を担う重要なエネルギーなのです。
ここでは、液化天然ガス(LNG)とは何かも含めて、解説していきたいと思います。
●LNG(液化天然ガス)とは
電力を生み出す発電のエネルギー「電源」の多くは、石炭、LNG、石油などの「化石エネルギー」でまかわれています。その比率は、太陽光や風力などの「再エネ」が増えた今でも70%に上ります。化石エネルギーの「化石」は、古代の植物や動物、プランクトンの遺骸が長い時間を経て変成してできたためにこう呼ばれます。「化石エネルギー」は地下から掘り出されて精製され、燃やされて熱を発し電気などの動力に変えられます。しかし、その過程で二酸化炭素などの有害な温室効果ガスを発生させます。
このうち、日本の電力を作るエネルギー源で、最も多く使われるのが「天然ガス」なのです。天然ガスは2023年度の日本の電源構成で29%を占めました。次が石炭で28.2%、石油は割高なので2.0%と少しです。
「天然ガス」自体は、地下から採掘できるガスの総称なので、火山のガスなども含まれます。ただ、一般的には可燃性でエネルギーにできるものを指します。メタンを主成分にエタンやプロパンを含み、加工されて都市ガスやプロパンガスの原料となります。
欧米では、天然ガスは採掘されたままの気体で、パイプラインを通して各国に送られます。日本は島国なので、ー162度以下に冷やして液状にした「LNG(液化天然ガス)」として船で輸入されます。液体にすると体積が約600分の1になり、運びやすくなるからです。
●天然ガスのメリット
天然ガスが1位なのには理由があります。重要なのは、石炭や石油など他の化石エネルギーに比べ、温室効果ガスの排出が少ない点です。二酸化炭素の排出量は石炭と比べて57%。硫黄酸化物は0、窒素酸化物も20~37%と低く、煤じんなども多くありません。
日本は2050年度でのカーボン・ニュートラルを宣言し、温室効果ガス削減をゼロにすることを目指しているので、好適な燃料なのです。EUの執行機関であるヨーロッパ委員会も、2022年2月に条件つきながら「原子力と並んで天然ガスは脱炭素化に適合したグリーンな資源だ」としました。
第2の理由は、地政学的リスクの低さです。天然ガスはほぼ100%輸入ですが、全世界で豊富に産出されるため、輸入元はオーストラリアや東南アジア、カタールなどのアラブ諸国、ロシア、アメリカ、アフリカと多様です。2022年2月に起きたウクライナ紛争のように、1国で戦争が起きて輸入停止となっても、極端には困りません。アラブ諸国からの輸入に偏りがちな石油に比べて大きなメリットです。採掘可能年限は50年程度と石油並みです。
天然ガスによる発電は、発電量の調整が行いやすい点もメリットです。このように天然ガスは使いやすく、しかも日本は世界に先がけて目をつけたので、現在では世界有数輸入国となりました。それだけではなく、輸入元の生産がはかどるよう、各国がLNG基地を建設するのに多額の投資を行うなど、インフラ整備にも積極的です。
●LNGを世界が奪い合いはじめた
LNG先進国だった日本ですが、2022年のウクライナ紛争以降、様相が変わってきました。ヨーロッパ諸国は、天然ガス輸入をロシアからのパイプラインに頼っていました。しかし、前述したウクライナ紛争で、制裁のために各国がロシアからの天然ガス輸入の脱ロシア化を進めるようになったのです。ロシアも対抗措置としてパイプラインの稼働を点検のためと称して停止したり、さらにロシアとドイツを結ぶ海底ガスパイプライン「ノルドストリーム」で相次いで爆発が発生しています。ウクライナ紛争は長期化しており、終息が見えません。仮に停戦となった後でも、ヨーロッパ各国の脱ロシアの傾向は続くと思われます。
こうした情勢を反映し、ヨーロッパ各国がアメリカのメキシコ湾岸で生産される天然ガスをLNGとして、積極的に輸入しはじめました。もともとメキシコ湾岸の天然ガスは、日本や韓国、中国など東アジアの顧客が多く、今は世界的な争奪戦となっています。
2023年度のLNG輸入量は、1位がヨーロッパ諸国、2位が中国、日本は3位。数年前まで1位をキープしていた日本ですが、その様相は変化しています。
日本はといえば、ロシアのシベリア地方(サハリン州)にある石油・天然ガス開発事業「サハリン2」から、LNG総輸入量の9%近くを輸入しています。日本もロシアに対して経済制裁は行っていますが、天然ガスには禁輸措置を行っていません。一時期、ロシアはサハリン2を国有化すると脅しの声を上げ、日本への禁輸かと騒がれました。しかし、今のところ可能性は低いようです。
LNG価格も、ロシアがウクライナ侵攻を行った2022年2月には1MMBtu(LNGの単位:百万英国熱量単位)あたり85ドルと、1年前の6ドルから14倍もの価格上昇を見せましたが、落ち着きを見せています。
●LNGの価格は安定するか
では、これからLNG生産はどうなるのでしょう。2023年の天然ガス生産量は、世界的にはおおむね安定していました。ロシアの生産量が5.5%減少したのですが、その分アメリカの生産量が5%以上増え、全体としては増減はありません。
今後の予測としては、IEA(国際エネルギー機関)などでは、LNGは余剰となり、価格は下がっていくと考えています。アメリカやカタール、アフリカなどで2030年頃から新しい生産施設が稼働を始め、LNG生産力が着実に伸長。また再エネによる発電も増えていくためです。
一方で日本エネルギー経済研究所では、まだ今後は不透明だとしています。上記の新しい生産施設の稼働には、政情不安もあると考え、また日本・中国・韓国以外のアジア諸国でのLNG消費が増えることから、2030年頃の供給過剰は起きないと予測しています。
このような状況下で、冒頭に述べたトランプ大統領の「日本は記録的な量の米国産天然ガスの輸入を始める」発言が現れました。
これが現実になれば、日本もLNGのロシア依存から脱却ができ、安定供給が継続します。LNGの価格が安定すれば、電力価格も下がると思われます。一方で、米国産LNGの価格は果たして低いままなのかという点と、アメリカに依存を深めることで手綱を握られ、振り回されることにならないかという不安もあります。
一応、一時期のようなLNGショックからは脱却しそうに思えますが、今後も気を緩めるわけにはいかないでしょう。