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【電力コラム】石炭火力の廃止とダイベストメントの停滞

●石炭火力発電は2035年までにおおむね廃止

 2024年4月、イタリア・トリノで開かれた先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合で、「2035年までに、二酸化炭素排出削減対策のない石炭火力発電を段階的に廃止する」ことが決議されました。
 石炭火力は、現在、日本ではLNG(液化天然ガス)に次いで発電に使われている化石エネルギーです。温室効果ガスである二酸化炭素を大量に排出するため、廃止は世界的な傾向になっており、ヨーロッパではオーストリアなど各国がすでに全廃しています。G7でもイギリスが2024年に全廃。イタリアが今年2025年、フランスが2027年に全廃を予定。ドイツでは2038年を予定していましたが、前倒しして2030年に全廃の予定です。
 こうしてG7各国では、次々と石炭火力全廃が行われています。
 一方で、アジアに目を向けると、60%を超える中国を始め、東南アジア各国では軒並み50%を超えています。

●日本では

 日本ではどうなのでしょうか。日本では、2030年度までに温室効果ガス排出量の多い石炭火力発電所を段階的に休止する、火力脱炭素化計画を進めています。石炭火力発電所の中で低効率の旧式のものは亜臨界圧方式(Sub-C)と、超臨界圧方式(SC)のもので、全体の8割を占めます。2019年度の旧式の石炭火力による発電量は1161億kWhでしたが、22年度までの3年間で、130億kWh以上削減しました。2030年度に向けては、さらに600億kWh減少させ、397億kWhとする予定です。予定通りにいけば、発電量に占める石炭火力の比率は20%程度に下がる見通しとなっています。
 一方で、効率がよく温室効果ガス排出の少ない超々臨界圧方式(USC)などは残す予定です。

●エリア別では

 ただ、石炭火力の発電比率は、エリア別でも大きな差があります。
 2023年度の電源比率を見ると、東京24%、中部19%、関西19%、九州20%と大都市圏で低い一方、北海道36%、北陸42%、沖縄59%と多いエリアもあり、この状況は以前から変わっていません。関西・四国・九州エリアなどは、原子力発電所の稼働にも助けられている面があります。一方で北海道・東北・北陸・沖縄は石炭火力への依存度が高く、しかも旧式の発電所が多いなどの難点があります。政府では、沖縄エリアなどの非効率な石炭火力の発電比率が高いエリアなどには引き続き配慮を行う、としています。

北海道電力 36%
東北電力 33%
東京電力 24%
中部 19%
北陸 42%
関西 19%
中国 37%
四国電力 29%
九州電力 20%
沖縄電力 59%

●もう一つの流れ・ダイベストメントの停滞

 こうして石炭火力の廃止が進む各国ですが、もう一つの注視したい流れとして「ダイベストメントの停滞」が挙げられます。「ダイベストメント(投資撤退)」とは、石炭火力などの温室効果ガスを大量に排出する設備などへの投資をしない、という大手投資家や機関などの取り組みでした。投資を停止することで、地球温暖化へストップをかけようというのです。
 ところが最近、ダイベストメントの中心である団体GFANZから脱退する金融機関が増加しています。GFANZは2050年までに温室効果ガス排出ゼロを目指す金融機関の世界的な枠組みです。しかし、脱炭素に「消極的」で化石燃料の採掘を積極的に後押しするトランプ大統領の当選で、状況が大きく変わりました。GFANZの取り組みは、独占禁止法に違反するとしてアメリカなどで批判にさらされ、2024年末にJPモルガンなどといったアメリカを代表する銀行群が離脱を表明したのです。欧米でも代表的なGFANZメンバーが脱退し、日本でも東京海上、三井住友などの大手銀行が脱退しています。
 こうした動きが、即座に石炭火力への投資再開へとは結びつかないとは思えます。ただ、たとえばアジア諸国で、高効率かつ温室効果ガスの排出が少ない石炭火力発電所の建設が検討された時、日本が技術協力を行うこともあるかもしれません。
 また、2030年までの低効率な石炭火力の廃止についても、大手電力会社10社で作る電気事業連合会(電事連)が、一律的な廃止に反対を表明しました。
 石炭火力の廃止は継続して進められると思えますが、反・脱炭素化ともいえる世界的な潮流で、動きはにぶくなるかもしれません。今後石炭火力発電所の動向にも注意を払っていきたいところです。