お役立ちコラム

【電力コラム】電力の未来はどうなる!?

■電力不足解消、料金低下、脱炭素化が大問題
 今回は、電力はこれからどうなるのか、未来のことを考えていってみましょう。
 今の日本が直面している課題は、
(1)深刻な「電力不足」
(2)エネルギー価格の高騰と、それに伴う電気料金の上昇
(3)再エネを中心とする「脱炭素化」の進展です。
 電力不足のため、廃止予定の石炭火力発電所の運転延長を行う国もある中で、電力不足を解消しながら、脱炭素を同時に進めていくのは非常に難しいことです。
 理屈では、「天然ガスや石油などの化石エネルギーが高騰するなら、思いきって再生可能エネルギーにシフトしてしまえばいい」ということが成り立ちます。しかし、そう簡単にはいきません。再エネ電源はまだ数が足りない上、調整も難しいからです。
 日本は、2030年までに「温室効果ガス排出46%減」と表明しました。国際的にもそれを達成する必要があります。しかし、現実には、電力が不足してそれどころではありません。石炭火力でもなんでも利用して、電力を確保しなければ、停電になってしまいます。ウクライナ紛争以降、この傾向はより一層際立っています。日本は大きなジレンマの中にあるのです。

■再エネは太陽光頼み。洋上風力は2040年頃に活発に
 では、今後はどうなるのでしょうか。
 再エネに関しては、太陽光パネルを中心に今後もますます増設が進むと思われます。
 東京都では、2025年から一戸建て住宅の屋根へのパネル設置の義務化を行うことになりました。これに追随する自治体が多く現れるでしょう。太陽光発電は再エネで設置には歓迎ですが、その一方で、使い終わった太陽光パネルが大量廃棄される問題や、発電施設設置のために土地の乱開発が進まないか、などといった懸念もあります。
 また、太陽光パネルや蓄電池については、重要な素材となるレアメタルの多くを、中国が独占しているという問題もあります。
 地政学的な懸念、たとえば台湾有事などが発生した場合、各国は今のロシアに対するように制裁を行うと思われます。しかし、レアメタルを始め、数々の資源や製品製作を請け負う中国との取引をすぐ止められるのか、というとかなり難しい問題でしょう。
 太陽光以外では、洋上風力発電がキーになります。しかし2023年の今、第2弾の入札がまだ始まった段階です。建設開始にも至っていません。洋上風力が真価を発揮しだすのは、稼働がスタートする2030年以降、2040年頃からでしょう。それまでにどうやって温室効果ガス排出量を減らすのか。やみくもな太陽光パネルの増設でいいのか、といった問題もあります。

■LNGがやはり頼み。原発の再稼働がキーに
 では再エネ以外はというと。LNGの輸入は引き続き増加するでしょう。
 LNG価格は、ヨーロッパの脱ロシア政策で今は不安定です。しかし、ロシアの代わりにアメリカのカリブ海沿岸や中東諸国などからの新しい供給体制が確立されるにつれ、価格はいったんは落ち着くと思われます。ただ、世界中がLNG奪取に目を向けている現在、価格は高めで推移していくと思われます。現実に、ヨーロッパのLNG輸入量が、2022年には中国・日本を抜いたという報道がありました。これまではロシアからのパイプライン輸入が大半だったため、輸入量は限られていたのです。
LNGに頼る限り、燃料価格の高止まりという悩みは続くでしょう。
 
 石炭は廃止に向かうでしょうが、最新式のUSC(超々臨界圧石炭火力発電)を中心に、再エネのバックアップ電源として根強く残っていくと思われます。
 さらに2030年頃には、原子力発電所の再稼働がより進むと思われます。
 世論の反対など、難しい問題を抱える原発ですが、今の電力不足を緩和し、2030年の温室効果ガス削減目標を達成するのに、他に強力な対策は今のところ見当たりません。風力など将来の再エネ中心の電力体制に日本が脱皮するためのツナギとして、必要とせざるを得なくなるでしょう。
 20年代後半からは、原発の再稼働が進み、新築も話題にのぼると思われます。
 現在の政府全体が、どこか「脱炭素の最後の頼みの綱」として原発を見ている感じを受けるのは、気のせいでしょうか。

■電力はより賢くなる!?
 厳しい話題ばかりを取り上げましたが、一方で、明るい話題もあります。
 今後はDR(デマンド・レスポンス)が高度化し、双方向化が進むでしょう。
 一般家庭でも、節電すればポイントがもらえるなどの「節電ポイント制」が浸透し、国全体での節電のシステム化が進むと思われます。消費電力も抑えられ、電力供給や需要の調整がかなり「こなれて」くるのではないでしょうか。
 EVも2025年以降、日本メーカーが次々に新車種の本格的な投入を行ってくると思うので、かなり増加すると思われます。特に近距離の移動に使う軽自動車は、価格の引き下げがキーです。補助金込み150万円を切ってくる価格になり、急速充電ポイントも増加すれば、浸透してくると思われます。
 電力系統に関しても増設が続いています。これまで、再エネで発電した電力は広域のエリアに送電することが難しい面もありました。しかし将来的には、北海道や東北の洋上風力で発電した電気を、東京で使うことも可能になるかもしれません。

●新電力企業は統合が進む
 新電力企業は、電力価格高騰に直面し、新規参入はかなり絞られてくると思われます。一時期、爆発的に増えた反動として、小規模の新電力同士が合併したり、大手電力会社への統合が起きるのではないでしょうか。新電力にも激動の現在を生き抜く知恵が必要となります。
 このように、電力の未来はまだ見通せぬもので、1年前とは想像もしなかった激動が続いています。今後も、電力の現状をしっかりと見ていきたいものです。