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【電力コラム】送電のムダをなくす、「日本版コネクト&マネージ」や「再給電方式」とは?


■日本の送電設備の制約とは

 「系統接続」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。電力の「系統」とは発電から送電・配電にいたる電力システム全般のことです。「送電線ネットワーク」をイメージするといいでしょう。系統接続は、発電した電気を送電線に流すために、電力系統に接続することです。
 この系統接続には、ちょっと面倒なルール(系統制約)があり、再エネ関連の送電で問題が発生していました。そこで「系統制約」をなくそうとルール改正や改善が行われています。
 その一つが「日本版コネクト&マネージ」です。さらに2022年12月からは、メリットオーダーによる「再給電方式」がスタートしました。

■日本版コネクト&マネージとは

「コネクト(接続して)&マネージ(管理する)」は、イギリスなどで行われた系統管理の手法を、日本に持ち込んだものです。
 送電線の制約には、以下のようなものがあります。
・系統の容量の半分は、災害時などの緊急送電のために空けておく(N-1基準)。
・系統接続は、発電事業者の先着順に契約される。
・契約容量は「定格出力」、つまり発電できる最大限で設定される。
要するに、送電線の半分は使えず、先に契約した発電事業者が自分の発電できるいっぱいまで送電線を確保できるのです。
 これまでの系統は、旧来の火力発電所や原子力発電所などの契約が多くを占めていました。新たに参入した発電者は、(現実的には結構空いていても)系統の空きを使えず、送電契約しようと思ってもできませんでした。実際は系統の10%程度しか使われていないのに、新規参入した発電者は送電できない、という状況だったのです。
 新たに系統の送電容量を増強するには、非常にお金と期間がかかります。新規参入した発電者の多くは、再エネの小規模発電事業者です。系統制約のおかげで、再エネ発電者が締め出されていました。
 そこで政府では、系統制約の早急な解消のため、今ある電力系統を有効に使うためのルール改正、「日本版コネクト&マネージ」を行うことに決めたのです。

■日本版コネクト&マネージの3つの方法

「日本版コネクト&マネージ」には3つの方法があります。
(1)「想定潮流の合理化」
(2)「N-1電制」
(3)「ノンファーム型接続」

(1)「想定潮流の合理化」
「想定潮流の合理化」とは、送電される容量を、より現実的なものに見直し、送電線の空きを作ろう、というものです。
 これまでは、すべての発電事業者が、発電できる最大限(定格出力)で契約していました。しかし今後は、ピーク時間や通常の発電量などを考慮して、契約容量を決めます。太陽光発電や風力発電は、それぞれの発電量のピーク時間などが違うため、より効率的に送電線の空きを埋めることができます。2018年から全国で運用されています。

(2)「N-1電制」
 複数(N)ある設備のうち、1つが故障することを「N-1故障」といいます。送電線の多くは1回線が故障してももう1回線で送電できるよう、2回線以上を持っています。「N-1電制(電源制御)」は、緊急時の予備に空けられていた送電線の残り1/2を使うというものです。ただし、緊急時には即時遮断するという条件です。2018年から部分的に開始され、2022年7月から本格運用されました。

(3)「ノンファーム型接続」
 発電するのに必要な容量が確保されている系統接続を「ファーム型接続」といいます。「ノンファーム型接続」は、接続する容量を決めずに、その時のファーム型接続分の容量を見て、空きがあれば再エネ電源などの接続を行うものです。(それまでは、送電容量が超過すると思われる場合は、そもそも接続が許可されませんでした。)
 ノンファーム型では、送電線が混んだ時に、出力制御が行われます。そのため、空き容量が少ない場合は、緊急時でなくても遮断が行われる可能性があります。2019年から試験運用が行われた後、2021年1月から、全国の空きのない基幹系統でスタートしました。
 日本版コネクト&マネージでの容量拡大は(1)「想定潮流の合理化」で590万kW、(2)の「N-1 電制」で4,040万kW程度。(3)の「ノンファーム型接続」では、空き容量はより大きくなると考えられます。

■「再給電方式」とは

 2022年12月から開始される系統接続の方式です。これまでは、先に契約した電源が優先的に容量を確保できる「先着優先」でした。しかし、今後は「メリットオーダー」といい、混雑が発生した場合は、燃料費など運転コストの低い電源から順番に稼働させる方式になります。逆に言えば、運転コストの高い調整電源から出力制御が行われます。これが再給電方式です。再エネなどの新規電源の接続は、原則制限されません。 再給電方式は、系統の運用を行う一般送配電事業者が行います。ノンファーム型接続との併用です。また、将来的には、市場の中で安く落札された電源から送電線を利用する「市場主導型」のメリットオーダーも検討されています。

■系統の増強も進んでいる

 系統のさらなる増強も計画されています。北海道・本州間は、いずれ海底直流送電線で現在の90万kWから800万kWに増強。
 中部・関西間と中国・九州間は、それぞれ278万から556万kWと倍増。四国から関西間は現状の140万kWから280万kWへ倍増。九州から四国間は、280万kWの系統を新設することが検討されています。
 今後、新たな発電事業の進展で、生まれ変わろうとする電源ネットワーク。この10年で日本はその姿を大きく変えるかもしれません。