お役立ちコラム

【電力コラム】「系統接続」とは

■電力の「系統接続」とは  

 電力の「系統接続」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。
 現在、政府が進めている「再生可能エネルギーの主力電源化」には、さまざまな課題が横たわっています。
 電力の「系統接続」の問題もそのひとつです。

 電力の系統とは、発電から変電、送電、配電に至る電力システムの総称です。難しい言い方になりましたが、「送電線」をイメージされれば分かりやすいと思います。系統接続とは、発電した電力を送電システムにつなぐことです。ただし、現状では日本の系統接続には、いくつかの制約があります。
 それらの制約は、
●系統の容量の半分は、災害時などの緊急送電のために空けておく(N-1基準)。
●系統接続は、発電者の先着順に契約される。
●契約容量は「定格出力」、つまり発電できる最大限で設定される。
 などです。

 これらの制限ルールによって、これまでの系統は、旧来の火力発電所や原子力発電所などの契約が多くを占め、新規の発電者が契約をしたくても空き容量がない、という事態が起きていました。契約容量の制限のために、系統の送電量が10%程度で残りが空いていても、新規の発電者の電力が流せない、といった事態が起きていたのです。

 空き容量を確保するためには、新たに送電線の増強をすることが望まれます。しかし増強には非常にお金がかかるため、早急にはできません。  そこで、新たに参入した発電者は、系統の空き容量がなく、送電契約をしたくてもできない、という問題が発生していました。しかも接続には高いコストがかかり、接続できるまでの期間も長くかかります。  新規参入の発電者の多くは、再生可能エネルギーの小規模発電者です。「系統制約」のおかげで、再生可能エネルギーの発電者が結果的に締め出しをされていました。  再生可能エネルギーを導入する上での課題のひとつに、この「系統制約」の問題があったのです。

■進む「系統制約」の改正

 そこで政府では、「系統制約」の早急な解消のため、今ある電力系統を有効に使うためのルールの改正を進めています。  それが、「日本版コネクト&マネージ」です。ヨーロッパなどですでに取り組まれている「コネクト&マネージ」の日本版です。電力系統を「接続(コネクト)」して「管理(マネージ)」するのです。  「日本版コネクト&マネージ」の方法は、 (1)「想定潮流の合理化」 (2)「N-1電制」 (3)「ノンファーム型接続」  です。

(1)の「想定潮流の合理化」とは、送電される容量を現実的なものに見直し、系統の空きを作ろう、というものです。  これまでは、どの発電者も、発電できる最大限で契約されていました。今後は、発電のピーク時間や通常の発電量などを考慮して、契約容量を決めます。太陽光発電や風力発電は、それぞれの発電量のピーク時間などが違うため、より効率的に送電線の空きを埋めることができます。すでに2018年4月から実施されています。

(2)の「N-1電制」は、これまで緊急時の予備として使わずに残していた系統の1/2を、条件を決めて使えるようにしよう、というものです。条件とは、緊急時には即時遮断するというものです。2018年10月から一部の地域で実施されています。

(3)の「ノンファーム型接続」は、接続する容量を決めずに、その時の系統の空きを見て、接続を行うというものです。ノンファーム型の契約では、系統の混み具合によっては、緊急時でなくても遮断が行われる可能性があります。制御・管理に手間がかかり、状況によっては多数の遮断が発生する可能性もあるため、まだ実施段階にはきていません。海外では事例があるので、現在研究が進められています。

■「系統制約」の緩和

 以上のような系統接続のルール改正の取り組みにより、「系統制約」の問題が、ある程度緩和されようとしています。  しかも系統制約だけではなく、系統そのものの増強もまた計画されています。  北海道・本州間の連系では2019年3月に60万kWから90万kWに増強。さらに30万kWの増強が検討されています。  また、東北・東京間では、2027年完成予定で現状の615万kWから455万kW増の1070万kWに増強。  東京・中部間では、2020年中に120万kWから210万kWに増強工事中。さらに2027年完成予定で、300万kWまで連系線増強を行う予定です。

 今後、再生可能エネルギーを始めとする新たな発電事業の進展で、生まれ変わろうとする電源ネットワーク。この10年で日本はその姿を大きく変えるかもしれません。