お役立ちコラム

【電力コラム】上昇を続ける電気料金

■2021年1月の上昇

 電力料金の上昇が続いています。
 電気料金の急激な上昇が大きな話題になったのは2021年1月。強烈な寒波の到来で電気の需要が高まった上、日照不足で太陽光発電の能力が低下。さらに発電の主力となっているLNGの輸入が、中国の消費量拡大や基地の事故、パナマ運河にLNG運搬船が増えたための運航遅れ(通行できるのは1日2隻まで)などで滞ったのが原因です。
 一時期、日本唯一の電力取引市場、日本卸電力取引所(JEPX)での電力価格は、平常の平均価格が23円/kWh程度だったのが150円/kWhと、実に7倍もの価格をつけました。
 これで困ったのは、「市場連動型価格」を電気料金メニューとして契約していた需要者(一般の契約者)です。市場連動型料金は、JEPXが発表する30分ごとの電力価格によって電気料金が変わる方式。もとは太陽光発電などによる夏季の電力価格低下などによって、電気料金が安くなるというのが売りのメニューでした。
 ところが、2021年の電力価格高騰によって、料金は実に5倍もの上昇を見せました。固定料金だった場合、月々1万円程度でよかったはずの料金が、実に5万円以上にハネ上がったのです。市場連動型料金の格安メリットは一気になくなり、採用している電力会社は、負担増分を肩代わりするなど対応に追われました。
 一時期、人気を集めていた市場連動型料金は、そのリスクが明らかになり、現在では個人契約では、契約者が少なくなっています。

■2021年から2022年にかけての上昇

2021年から2022年にかけても、電気料金は上昇を続けています。日本は、発電用エネルギーの約37.1%をLNG、31.8%を石炭でまかなっています。これらのうち特にLNGの輸入価格が高騰を続けており、2021年は電気料金が燃料費調整額の上昇という形で、恒常的に上がり始めました。さらに再生可能エネルギー発電促進賦課金の上昇も加わっています。
 燃料費調整額は、石油・石炭・LNGの輸入する燃料のコストに関する調整金。輸入額が大きくなるほど上昇します。また、再生可能エネルギー発電促進賦課金は、再生可能エネルギーの買取費用に上乗せする補助金を需要家に負担してもらう制度。こちらは、4月分から翌年3月分までが一定で、毎年改訂されますが、これも再エネの浸透により負担が増しています。
 LNG(液化天然ガス)は、化石エネルギーの一種ですが、石炭や石油に比べ、燃焼時のCO2や、ばい煙の排出量が少ないメリットがあります。
 脱炭素が世界の至上命題になっている今、エネルギー源として人気を集め、中国を始め各国が輸入量を増やしています。
 また、2021年夏以降、コロナ禍から世界的に経済が回復しはじめ、電力需要が増加したこともあって、LNGや石炭などの発電用エネルギーが不足していることも、価格上昇に影響を与えています。
 さらに、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻で、ヨーロッパ各国がロシアからのLNG輸入に制限をかけたため、価格がもう一段上昇するという結果に見舞われています。

■今後の影響は?

LNG自体は、長期契約が主体で、短期間で取引するスポット買いは少ないため、日本では影響は限定的と言われます。
 ただし、長期契約先の国で事故などが発生すれば、高価なスポット買いに頼るしかなく、燃料費の増大が心配されます。2021年冬にも、マレーシアが国内の油田で有害な水銀の濃度が上がっていることを理由に、LNGの供給を減らす決定をしました。LNGの供給は世界的にも不安定と言われ、電気料金の上昇に対する危惧は依然として残されています。