お役立ちコラム

キニナル・コトバ 第1回「激変緩和」


 激変緩和。「激しく変わるのを緩やかに和ませよう」という意味ですね。
 今使われている「激変緩和」という言葉は、政府の打ち出した「激変緩和措置」からきています。

■「激変緩和措置」とは何か

 今回、話題になっている「激変緩和措置」とは、2022年10月に政府が決定した「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」に盛り込まれた、エネルギー価格高騰対策です。
 最近では、電力やガスなどの価格が非常に高くなっています。
 たとえば一般家庭では、一昨年の12月に1万3千円程度だった電気料金が、昨年同期には2万円にまで上がる、というようなことが起きました。
 電気料金の「激変」です。これでは生活していけません。
 この「激変」は、電力の燃料となる天然ガスや石炭が、ウクライナ紛争や世界的な争奪戦、また長引く円安のために値上がりしているためです。
 これは世界的な傾向で、イギリスでは電気料金がいきなり数倍に増えるなど、各国で問題になっています。
 電気会社各社は、この燃料の高騰に対し、初夏以降、値上げを行うと発表しました(現在は、値上げ幅を再精査するという理由で、先延ばしされています)。対象となるのは、ユーザーの50%が契約している「規制料金」です。東京電力エナジーパートナーなら「従量電灯B」、関西電力なら「従量電灯A]などがこれに入ります。

 電気は、製造から運輸まで、ほとんどすべての産業に使われます。値上げが続くと経済全般にダメージを与えます。
 そこで政府では、この「激変」を少しでも和らげるよう、電気・ガス料金、またガソリン料金に期間限定で、一定の補助を与えることにしました。予算は約3.1兆円にのぼります。
 「激変緩和措置」は、
●電気料金で、2023年1~8月分の料金が低圧で1kWhあたり7円、高圧で1kWhあたり3.5円値引き。(9月使用分はその半額。10月以降は未定)
●ガス料金で、2023年1~8月分の料金が1立方メートルあたり30円値引き。(9月使用分はその半額。10月以降は未定)
●ガソリン料金で、2023年1~9月末まで、全国平均ガソリン価格が1リットル170円以上になった場合、1リットルあたり5円を上限(4月25日の週からは上限35円)として、燃料油元売りに補助金を支給する。
 という内容で行わています。

 激変緩和措置によって、標準的な4人家族の1家庭でおおむね2,500~3,500円程度の値引きとなる、とみられます。
 ユーザーにとってはありがたい措置ですね。

■実は、以前からあった「激変緩和措置」
 ちなみに「激変緩和」措置というのは、そもそもこれが最初ではありません。
 法律の変更に伴って、料金などの大きな変動が起きる場合、変動を和らげる措置が取られます。この措置を総称して「激変緩和措置」としています。変動によって、対象者が困ったり、場合によって倒産などが起きないようにするためです。
 たとえば、過去にも燃料費調整額の大幅な変動や、FIT制度の交付金などにも措置がとられた場合があります。また、電力関係だけでなく、年金制度など、さまざまなものに激変緩和措置はとられます。
 今回の「激変緩和措置」は、全国民の電気料金にかかわることですし、予算が3.1兆円と巨額だったこともあり、大きな話題となったのでしょう。
 ちなみに「激変緩和措置」は、あくまでも臨時の措置で、一時的なもの。9月以降、電力価格高騰が収まらなければ、結局のところ、需要者は高い料金を支払うことになってしまいます。
 今後、燃料価格は落ち着き、電気料金は下がるのでしょうか。9月以降の措置がどうなるか、心配ではあります。

(Colin BehrensによるPixabayからの画像を使用)