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【電力コラム】大規模停電はなぜ起きた?

■大規模停電はなぜ起きた

 最近、地震の影響で停電が起きた、というニュースをたまに聞きます。50年前なら、雷のせいなどで、夏にときたま停電が起きたりして、一家に1つは停電用のろうそくや懐中電灯が用意されていたものです。
 しかし、ここしばらくは日本の電力技術の向上などにより、大きな停電のニュースはありませんでした。
 それが、2018年9月6日の北海道の胆振東部地震による北海道全域のブラックアウトをはじめ、2021年2月13日に東京エリアで起きた95万戸の停電。また2022年3月17日には、福島県沖での震度6強の地震により、東京電力管内で約200万戸以上の停電が発生しました。
電力もハイテクの時代に、なぜこうした大規模停電が起きるのでしょうか。今回はそのメカニズムを紹介したいと思います。

■停電の原因は2種類ある

停電の原因は2つあります。一つは古くからある電流の経路が遮断されること。すなわち「電線が切れたり、電気設備が故障すること」です。このタイプの故障では、断線などの影響を受ける地域は限られています。また、事故が起きた時に電力会社がう回して電力を流すようルートを探すため、数時間程度という、比較的短い時間で復旧が行われます。
 もうひとつは「系統崩壊」です。電力は貯めておくことが非常に困難なものです。また、電力には供給(送電量)と需要(消費電力量)がぴったりと一致していないといけないという「同時同量」の原則があります。この同時同量が行われないと、電力の周波数が乱れ、機械が不調になったりと、さまざまな悪影響が起きます。
 この「系統崩壊」が大規模停電を引き起こしているのです。

■需給バランスが崩れ、ブラックアウトが起きた北海道胆振東部地震

 2018年の胆振東部地震では、最大震度7の地震の発生で、苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所でボイラー管が破損。3基あった発電機のうち2基が緊急停止しました。
 その影響で、北海道内の電力供給が大きく減り、需給バランスが崩れました。需給バランスが崩れると、動いている他の発電機のタービンが壊れたり、コイルの巻線が焼き切れる可能性があります。
 そのため、他の発電所の発電機が危険を防ぐために自動的に止まって系統(送電設備)から離脱。北海道全域の発電所が、ドミノのように連鎖して停止することになりました。そこで、北海道全域のブラックアウトという前代未聞の事態が発生したのです。
完全復旧には時間がかかり、道内では輪番停電が行われることになりました。
 もうひとつ、緊急時にはエリア以外から電気を送ることができますが、本州と北海道を結ぶ「北本連携線」は60万kWしかなく、代替電力としては不十分でした。

■今はブラックアウトを防ぐ「周波数低下リレー(UFR)」が作動

 2022年3月の福島県沖の地震では、東京エリアで約209万戸の停電が発生しました。この時は、北海道のブラックアウトの時とは、異なる状況でした。
 ブラックアウトの教訓を得て、周波数低下リレー(UFR)というシステムが作動したからです。
 このUFRは、地震のような時に事故を防止するため、発電所が停止して供給が減った場合、「需要を系統から切り離す仕組み」です。
 つまり、残った発電所の力で周波数が一定になるまで回復するよう、「自動的に停電を起こして、電気の需要を減らす」というシステムなのです。こうすると一部で停電は起きますが、北海道のようにブラックアウトが長時間起きるのを防ぎ、短時間での復旧が可能になります。
 UFRは、変電所の単位で設置されており、それが2022年3月の地震で発動したのでした。
 その結果、地震発生の午後11時半から約3時間で、停電は回復しました。エリアの送配電を行う東京電力パワーグリッド株式会社では、ツイッターなどで、UFRの作動で停電が起きていることを説明しました。
 深刻な大規模停電を防ぐために、一時の停電を自発的に起こす仕組み。地震被害の多い日本ですが、電力技術の向上により、こうした防止技術が開発され、事故を未然に防いでいるのだといえます。