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【電力コラム】電力不足はいつまで続く!?

■史上初の「電力需給ひっ迫警報」発令!

2022年3月21日。史上初の警報が出されました。「電力需給ひっ迫警報」です。
 電力需給ひっ迫警報は、2012年に創設された制度です。翌日の電力が不足しそうになった時に、停電が起きないよう、政府が出すものです。 東日本大震災と福島第一原発の事故のため、電力の供給が大幅に不足した事態を受けて作られました。警報を出すことによって、節電を呼びかけ、停電などの事態を防ぎます。
 発令された3月21日は、3月16日に発生した震度6強の福島県沖地震の影響で、火力発電所がまだ停止していました。合計6基334.7万kWの停止により、発電能力が低下。しかも3月末なのに記録的な寒さで、電力需要が増えそうでした。さらに冬は電力増に対する警戒態勢をとっていましたが、春の訪れで、2月末に一部を解除したことも原因でした。
 警報は午後6時に発せられるのが原則でしたが、最後まで翌日の予想がつかず、午後9時の発令となりました。発令時間が遅れたため、翌日午前中の達成率は30%程度と低かったものの、東北電力・中部電力などから141万kWの電力を融通。また、東京スカイツリーの明かりを消すなどの積極的な節電の呼びかけが功を奏し、停電は回避されました。

■「電力需給ひっ迫警報」とは

 電力需給ひっ迫警報は、具体的には「予備率」、すなわち翌日の電力供給の余力が3%以下になると予想される場合や、実際に下回った場合に発令されます。ひっ迫が予想される前日の16時をめどに資源エネルギー庁が発令します。
 ただ、警報だけでは急激な電力不足への対応が遅れるとして、2022年5月から「電力需給ひっ迫注意報」と「電力需給ひっ迫準備情報」が創設されました。注意報は、予備率が5%を下回ると予想される時に、前日16時をめどに発せられます。発令するのは資源エネルギー庁です。
 準備情報は全国10の各エリアごとに、予備率が5%を下回ると予想される時に、前々日の18時をめどに発令されます。発令するのは、各エリアの一般送配電事業者です。
 注意報も、創設から間もない2022年6月に発令されました。

■「予備率」とは

 ここで、警報や注意報が発令されるもととなる、予備率についても説明しておきましょう。
 電気は貯めておけません。そこで緊急の電力需要増に対し、発電量に余力を持たせる必要があります。それを「供給予備力」といいます。
 予備率(供給予備率)は、その予備力の比率です。電力の周波数維持のためには3%以上、トラブル時に停電を起こさないため、8~10%の予備率が必要とされます。予備率の算出の仕方は、以下となります。

供給予備力=ピーク時供給力ー予想最大電力

供給予備率(%)=供給予備力/予想最大電力×100


■夕方から夜にかけての時間帯がピンチ

 警報が出るほど電力が不足した理由は、気候変動で夏がより暑く、冬がより寒くなり、エアコンなどの電力消費が増えたこと。また地震などで発電所が停止し、復旧の遅れが重なったことなども挙げられます。
 夏場の昼は、太陽光発電などの電力でまかなえます。でも夕方から夜にかけては、太陽が沈む上に暑いままです。エアコンなどの電力需要は減りません。太陽光が使えないので、火力発電などを活用するしかありませんが、脱炭素化の影響で石炭火力は休廃止が続いています。また、原子力発電所は、安全性などの理由で審査中のものが多く、運転中しているのはごく一部。厳しい状況が積み重なっています。
 長い年月のスパンで見れば、こうした状況は脱炭素化、再エネ化への過渡期の現象かもしれません。
 しかし風力発電など、夜間も使える再エネ発電設備の設置がまだ先の今、現状を改善する抜本的な方策は見つかりません。
 2023年1・2月の予備率の予想は、東北・東京エリアで4.6%。なんとか確保できる見通し(2022年9月段階)。対策が施され、2022年のように予想予備率が3%を下回る、極めて厳しい状況は回避される見込みです。今後も、官民を挙げての協力で電力不足を乗り切る必要があります。

■デマンド・レスポンス(DR)の進化を
 そんな中で期待されるのが、進化した節電、デマンド・レスポンス(DR)です。デマンド・レスポンスは、電力供給のレベルを確認し、需要者に通知して、節電してもらう手法です。たとえば、電力がひっ迫しそうな時、お店や工場に連絡して不要な電力をなるべくカットしてもらい、その代わり節約分の電気料金を安くする。また一般家庭にメールで節電要請を送り、節約してもらった分をクーポンやポイントで還元する、といった方法があります。
 節電だけで、すべての電力不足は解消できません。しかし、AIなどの分析を併用すれば、かなりの効果が上がると期待されています。
 夏の暑さ、冬の寒さはますます続き、電力消費が増大していく傾向はまだ続きます。また、節電を呼びかけると、高齢者がエアコンを止めてしまい、熱中症にかかるなどの弊害も現れてきています。工夫を続けて、なんとか電力不足のない一年を過ごしたいものです。