各国の電力自由化状況

南アジア

バングラデシュ

世界最貧国のひとつから、繊維業などの製造拠点国へ

 バングラディシュはインドの東に位置する国で、14.7万km2と日本の約4割の面積に1億6,365万人(2018年)が住み、人口密度は世界最高(都市国家を除く)です。
 住民の多くはイスラム教徒で、1947年のインド独立の時に、東パキスタンとしてインドから分かれ、1971年に西パキスタン(現在のパキスタン)から独立して現在のバングラディシュになりました。政治は民主制で、5年ごとに選挙が行われています。
 GDPは1,800億ドル(2017年)で1人あたりのGDPは1,675ドル。世界最貧国のひとつですが、安い労働力を利用して、繊維業を中心に世界の企業が工場を設置しています。

電力不足は深刻、需要の70%程度に

 電力については、人口増加などにより需要が急増しています。しかし発電容量が2014年段階で1,064万kWと需要の7割程度しか満たせていません。発電所も設備の老朽化・故障などで、十分な能力が発揮できずにいます。
 電源は、2015年段階で天然ガスが81%に石油が16%。バングラデシュは天然ガス資源が豊富でしたが、需要が増えたことで国内では足りなくなり、2018年から輸入をはじめました。
 電化率は2015年で75%。2010年には55%でしたので、大幅に改善されていますが、電化率90%以上の都市部と比べ、農村部では遅れが目立ちます。
 政府では、このような電力不足を受け、2020年までの第7次5ヶ年計画で、発電能力を2,300万kWと倍に拡大、電化率をを人口の96%とする目標を掲げています。
 この電力不足に対し、日本企業が出資している衣料関係の工場などは、自家用発電設備を設置して対応しているところも多いようです。インド、バングラデシュなどの工場では、こうした自家発を有する工場が多く見られます。
なお、農村部を中心に、2~3万円で買える自家用太陽光発電システム「SHS(ソーラー・ホーム・システム)」が普及していて、400万世帯が導入しています。

小売事業は国営公社が主体、発電所や電力網整備に日本も参画

 バングラデシュの電力事業は、政府のBPDB(バングラデシュ電力開発庁)が発電と送配電すべてを独占していましたが、1996年より自由化が始まり、分離・独立化が進んでいます。
 発電部門では、電力不足などの問題から、IPP(独立系発電事業者)の参入も積極的に認可しており、100%の外国資本も参入が可能です。
 送電部門は、BPDBから分離したPGCB(バングラデシュ送電会社)が担っています。民間企業で、株式公開はされていますが、BPDBが現在でも4分の3の株を所有しています。
 小売り部門については、電気料金は政府が管理していますが、一部で民間企業の参入もあります。首都ダッカでは公社であるDPDC(ダッカ配電公社)の他に、民間のDESCO(ダッカ電力供給会社)が営業を行っています。また地方では、公設のPBS(農村電化組合)が農村への電力供給を担っています。

IPP参入主体で、5,000億円の発電所・港湾建設事業も

 日本の対応では、住友商事などが、2017年に南西部のマタバリ港で、高性能の石炭火力発電所2基(発電容量120万kW)の建設をスタート。港湾建設と合わせて、円借款5,000億円規模の案件です。バングラデシュは、長年、政府開発援助(ODA)相手国として日本が援助を行っている上、中国の影響なども大きくないという点もあり、IPPを中心とした今後の参画が期待されます。