各国の電力自由化状況

南アジア

インド

2022年頃には世界最大の人口を有する大国

 インドは、南アジアを代表する大国で、328.7万km2と日本の8.7倍の国土面積を持ち、人口も13億3,422万人(2018年推計)と世界2位。2022年頃には中国を抜いて1位になると予想されます。長くイギリスの植民地でしたが、1947年に独立しました。政治は民主制でヒンドゥー語の他に英語も公用語とします。
 GDPは2兆5,974億ドル(2017年)で世界7位。今後も7%前後の経済成長が続くと見込まれていますが、一方で1人あたりGDPは1,939ドルと低く、貧困層の多さも大きな問題です。
 産業は茶や綿などの農業や自動車・電気部品など工業に加え、IT産業に強く、英語も通じることから欧米企業のシステム開発の拠点などによく利用されます。経済の発展には、IT人材・産業の輸出が大きく貢献しています。

発電容量は世界3位だが、電力不足もまた深刻

 インドの発電設備容量は3億4,400万kW(2017年)と世界3位。電源は石炭の57%を中心に再生エネルギー20%、水力13%、ガスが7%。原子力発電所も22基が稼働していて、発電容量の2%を占めます。
 発電量は巨大ですが、電力消費量の増加も多いため、電力不足は深刻です。送電設備の故障や盗電が多く、発電量の実に2~3割が送電ロスで失われるとされます。停電も日常茶飯事です。
 都市部は電化されていますが、農村部では電気が届いていない場所も多く、3億人がまだ電力を使えずにいるとされます。工場などは自家用発電機を持つのが当たり前で、全体の1割の工場が発電機を使っています。

再生可能エネルギー利用には非常に積極的

 こうしたインドですが、電力供給の改善には近年、非常に意欲的です。電力省は、2019年までに国内全世帯に24時間安定した電力を供給する、と宣言し積極的に電力整備を行っています。その成果として、2018年には電力供給が初めて需要を超えました。
 また、再生エネルギーによる発電も積極的に利用しようとしています。特に太陽光発電や風力発電が主力で、2027年までに太陽光1億kW、風力6,000万kW、その他バイオ発電などを合わせ合計1億7,500万kWを導入する計画です。2009年からは固定価格買取制度を実施していて、配電会社には一定の比率、再エネで発電された電力を使うように義務付けてもいます。

政府は電力自由化に熱心だが、州政府の壁が厚い

 電力の自由化についても、政府では積極的に取り組んできました。すでに1991年には発電部門で自由化をスタートし、IPP(独立系発電事業者)が多く生まれました。しかし、手続きが面倒なことや、州政府に電力を買う財力が不足していたなどの理由で、不調に終わっています。
 その後、2003年に電力法が大きく改正されるなど、配電部門や料金部門の自由化が図られて、民間企業の参入が可能になりました。
 現在は、発電部門は国営のNTPC(火力発電公社)、NHPC(水力発電公社)、NPCL(原子力発電公社)の他に州営企業とIPP(独立系発電事業者)があります。送電部門は州をまたぐ送電はPGCIL(国営送電会社)が8割のシェアを持っていますが、各州では州営送電会社が業務を行っています。

 ただ、インドは29の州と6つの直轄領に分かれており、州政府の権限が強い国です。電力政策も州ごとに大きな違いがあり、いまだに発送電では、旧SEB(州電力機関)を分離した公社などの州営機関が大きな力を持ちます。
 首都のデリーなどでは一部民間企業の参入が成功を収めていますが、電力料金は州ごと会社の認可ごとに違い、混迷が続きます。料金は基本的に一般家庭向けは安いものの、工場や商店向けには料金が高いのが特徴。一般家庭が安い分の差額は州政府が負担しており、財政悪化の要因ともなっています。

日本からの参入は

 今後もインドでは、電力インフラの充実が積極的に図られると思われます。日本では2017年にインド政府との間で、日印原子力協定が発効するなど、インドの原発市場への参入も可能になりました。
 経済発展で地力を伸ばすBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の1国として、再生エネルギーなど電力事業への日本企業の進出も今後は期待されます。