各国の電力自由化状況

東アジア

大韓民国

日本の隣国として密接な関係

 大韓民国(韓国)は日本の隣国として、密接な関係を持ち続けている国です。面積約10万㎞2と日本の約4分の1の国土に、人口5,160万人が暮らしており、うち半数は北部の首都・ソウル周辺に在住するといわれます。
 1953年までの朝鮮戦争で疲弊しましたが、1960年代に経済復興をとげ、現在は名目GDP1兆6,194億円(2018年)とロシアに次いで世界12位、アジアでは中国・日本・インドに次いで4位です。1人あたりのGDPは31,346ドルと高い水準にあります。
 日本の貿易相手国としては、日本からの輸出で3位、輸入で5位の重要な地位を占めます。重工業で発展した国ですが、最近はIT機器や家電、自動車等にも強みを見せています。
 韓国とは商工業・観光・サービスともに深い関係にあります。ただ一方で反日感情が強く、最近でも徴用工問題などで日韓2国間での摩擦が起きており、経済・通商関係を含めて注意深い対応が必要でもあります。

電源は石炭・原子力が多いが、再エネ重視に切り替え

 韓国は国内に資源が少なく、8割を海外からの輸入に頼っています。
 電源比率は2016年で、石炭42%、原子力が28%、天然ガス25%、石油3%、再生可能エネルギー2%と化石燃料が7割を占め、再エネは多くありません。
 原子力については、2016年までは拡大していく計画でしたが、2017年に現在のムン大統領が反原子力・反石炭火力を公約として当選。原子力と石炭火力を段階的に廃止して、天然ガスと再エネに転換することを表明しました。2019年6月に閣議決定された「第3次エネルギー基本計画」では、2040年までに再エネの比率を30~35%にするとし、原子力については段階的に縮小する方針としています。
 なお、再エネについては2002年からFITが行われていましたが、2012年から再エネ供給義務化制度(RPS)に切り替えられ、発電事業者には2022年まで発電量の10%を再エネにすることが義務付けられています。また、再生可能エネルギー証書制度(再エネの環境付加価値を証券として有償化し、補助金として利用する制度)も行われています。

電力事業は韓国電力公社が事実上の1社独占

 こうした韓国の電力事業は、長く国営の韓国電力公社(KEPCO)により、発送配電から小売りまで一貫して独占的に運営されてきました。しかし、世界的な電力事業再編の流れを受け、1989年にKEPCOが株式会社化。2001年には発電部門の再編が行われ、水力原子力発電会社1社と火力発電会社5社(南東発電会社、中部発電会社、西部発電会社、南部発電会社、東部発電会社)に分割されています。
 ただ、現在もKEPCOの株式の51%は政府が所有し、事実上の国営企業として送・配電・小売部門で1社独占体制を続けています。
 大手発電6社も徐々に民営化される予定でしたが、現状ではKEPCOが株式を所有したままで民営化は行われていません。現在は11社のIPP(独立系発電事業者)の他、再エネ発電事業者も参入していますが、IPPの比率は13%、再エネ事業者が6.2%にとどまっています。
 卸売電力については、2001年に韓国電力取引所(KPX)が設立されています。電力はKPXから買い取るよう定められていますが、電力需要の安定のため、入札は政府が管理しています。
 電気料金については、政府による低い価格の規制料金で一律されています。そのため、近年の化石燃料の価格上昇などの影響を受けて、電気料金収入より、電力を買い入れる費用のほうが大きく、KEPCOには巨額の赤字が累積しています。
 議会などでは電力自由化は議論には上るものの、実現にはまだ時間がかかりそうです。

電力の供給不足が課題に

 韓国では、首都・ソウル周辺に人口の半分近くが居住し、電力需要の多くを消費しています。それに対し、送電網が完備しているとはいえず、電力の供給不足が常に課題として挙げられています。電気料金が安いため、家庭でも電力の使用が増え、この傾向が一層強くなっています。2011年には長期の輪番停電などが発生しており、供給問題は、韓国にとって緊急の問題です。
 今後の日本からの投資については、電力の自由化が実質停滞しているため、未知数です。ただし、隣国として経済的にも深いつながりを持つことから、今後も注視していきたい相手国のひとつです。