各国の電力自由化状況

北アメリカ諸国

カナダ

広大で資源豊富な工業先進国。政策は州ごとに異なる

 カナダは、広大な国土を持ち、豊富な資源に恵まれた国です。国土面積は998.4万km2とロシアに次いで世界2位で、土地は日本の26倍。その一方で、世界有数の先進工業国でもあり、G7の一員でもあります。政治は、イギリス連邦の一員として英国女王を君主とする立憲君主制。アメリカ同様に州の権限が強く、10州と3つの準州によって法律などが違い、資源も州の所有です。なお、公用語は英語とフランス語で、東部のケベック州は旧フランス領だったため、フランス語のみを公用語とします。
 人口は3,741万人と少ないですが、名目GDPは1兆7,113億ドルとブラジルに次いで世界9位。1人あたりGDPも46,261ドルと高水準で、トロントは金融センターとして東京に次ぐ世界7位の水準です。
 地理的にアメリカとの結びつきが強く、輸出の約80%、輸入の60%以上はアメリカを相手としています。

水力発電が多く、全体の6割を占める

 発電の電源比率は水力が59%、原子力16%、天然ガスと石炭がそれぞれ8%、再生可能エネルギーが7%、石油が1%です。電力は自国で使用するだけでなく、アメリカにも多く輸出されており、2016年は輸出873億kWh、輸入が98kWhです。
 再エネは、水力が90%、風力が6%、木質チップなどを主体としたバイオマスが3%、太陽光が0.6%程度です。
 再生可能エネルギーの導入促進策としては、ニューブランズウィック州とノバスコシア州が、それぞれ2020年までに再エネ電源比率を40%とする、という再エネ利用基準(RPS)を設けており、またオンタリオ州とノバスコシア州、プリンス・エドワード島州では、FITが導入されています。
 なお、原子力については、今後も使い続けられる予定ですが、現時点で新しい発電所の建設計画はありません。
 一方、石炭火力発電については2030年までに段階的に廃止される予定です。

自由化は州単位。アルバータ州やオンタリオ州では電力小売が自由化

 カナダは電力事業に関しても、州ごとに運営が異なります。ただ、多くは送配電一貫型で、州営や市町村営・私営の電力事業者がいて、運営されています。電力事業者は国全体で400社ほどあるとされます。電力市場は自由化が進み、州営電力会社の多くは、発送配電を事業部門に分けていたり、会計を別々にしていたりと、発送配電の分離が行われています。
 電力の自由化についても各州ごとに行われています。
 まず、1998年にはアルバータ州で電気事業再編法が成立し、卸電気市場(パワープール)が創設され、発送電部門の自由化と整備が行われました。オンタリオ州でも同年にエネルギー競争法が制定。州営企業が発電会社と送配電会社に分割され、自由化がスタート。その後、2001年にアルバータ州、2002年にはオンタリオ州で電力小売までが完全自由化されています。
 その他の州では、ニューブランズウィック、ブリティッシュコロンビア、ケベック各州で大口産業用需要家のみに限り自由化が行われています。卸電力の自由化は、2017年現在でニューファンドランド・ラブラドール州とプリンスエドワード島州を除く8州で行われています。

電力産業への日本の参画は

 日本からの事業参画については、LNG関連などの資源開発やバイオマス発電用の木質ペレット製造会社への投資などが見られます。ただ、アメリカのシェール革命などで、アメリカへの天然ガス輸出などが減少している影響などがあり、中止されるプロジェクトもあります。今後の動向に興味がひかれます。