各国の電力自由化状況

東アジア

中華人民共和国

世界最大の人口と資源大国。インフラ整備も急進

 中華人民共和国、中国は東アジアの大国で、世界3位の963.4万km2の国土面積を持ち、世界最大の人口13億9,538万人を有します。1949年独立の社会主義国ですが、1980年代の鄧小平の時代に市場経済を導入して改革開放を行った結果、めざましい商工業発展をとげました。世界の工業製品の生産・組立が集中したことから「世界の工場」とも呼ばれています。近年ではIT、情報機器やサービス産業も発展し、アメリカと並ぶ2大国の地位を占めています。
 名目GDPは13兆4,073億ドルとアメリカに次ぐ2位。ただ、人口が多いこともあり、1人あたりGDPは9,608ドルで世界72位と、日本などに比べ4分の1程度です。
 1997年に返還された香港や1999年返還のマカオは、一国二制度として高度な自治権を保持しています。
 中国は、2013年以降、巨額の投資を行い、アジアからヨーロッパまでの世界の道路・港湾や発電所なども含めたインフラ整備を行う「一帯一路」政策を進めています。

石炭火力中心だが、今後は抑制。再生エネルギーと原子力に注力

 中国の発電設備容量は16億4,600万kW(2016年)で、現在は世界最大の電力生産国です。
 発電の電源比率は、2015年で石炭70%、水力19%、原子力3%、天然ガス2%、その他が5%となっています。
 自国で豊富な資源を持つこともあり、石炭火力が多いですが、過剰生産気味で、大気汚染も深刻であるという理由などで低炭素化を進め、2020年までには石炭の比率を55%程度にまで抑制する予定です。
 再生可能エネルギーに関しては、2020年までの第3次5ヶ年計画で水力・原子力を含めた非化石エネルギーの電源比率を39%までに上げる計画が立てられています。
 5ヶ年計画では、太陽光は2020年に1.1億kW、風力は2.1億kWの目標が立てられています。これらは急速な伸びを見せており、太陽光は2018年で1.7億kWとすでに目標を大きく超えており、風力は2016年で世界1位の1.49億kWを達成しています。世界のソーラーパネルメーカー10社のうち8社は中国の会社です(2017年)。

内陸部で発電し、電力消費の多い東の沿岸部へ「西電東送」

 中国は社会主義国ですので、電力事業は国営が中心ですが、自由化・市場経済推進の流れを受け、民間企業の参入も行われています。
 発電部門については、国営の5大発電会社(華能集団、大唐集団、華電集団、国電集団、中電投)をはじめ、省営・市区営・民間など約3,000社が発電を行っています。
 送配電部門では、国営の電力網である「国家電網公司」「南方電網公司」2社が送配電事業を事実上独占しています。2社は中国を6ブロック(華北・華中・華東・東北・西北・南方)に分けて、5大発電会社から電力を購入して各地に配電しています。送電方法は、ブロックごとに送電を行い、省ごとや地域単位の送配電事業者に分散させるという大規模なものです。これらの7社は、2002年の電力体制改革によって政府機関から、国営企業に改められました。
 中国は国土が広大で、地域差が大きいのが特徴です。北京・上海・広州などの東の沿岸部は経済発展がめざましく、電力不足が起きがちです。一方、西の内陸部は、資源豊富で人口密度が低く、発電所が作りやすい環境にあります。そこで、2001年から「西電東送」をスローガンに、内陸部の電力を東の沿岸部へ送電するプロジェクトを1,000億元(約1兆5,000億円)以上かけて行っています。
 送電ルートは、(1)南部ルート(雲南など→広東など華南)、(2)中部ルート(四川など→上海など華東・華中)、(3)北部ルート(内モンゴルなど→北京など華北)の3つに分けられます。

小売電力料金は政府の認可制。自由化も試行中

 中国では、小売電気料金は政府の認可制です。省・市・区ごと、利用の種別ごとに設定されています。住宅用は従量料金制で、大口需要家には受電設備容量に応じた基本料金と従量料金からなる2部料金制を設定しています。
 ただ、2014年頃から先進都市をはじめ、省レベルでの小売自由化が徐々に進められ、2015年の電気事業体制改革によって小売事業が試行化。6,000社を超える企業が設立されています。
 また、広州と北京には大規模な電力取引センターが設立され、卸電力取引も行われはじめました。中国政府は2020年には、電力市場取引制度を本格的に実施するとしています。

電力産業への日本の参画は

 貿易相手国として依然重要な中国。最近は米中貿易摩擦などによる中国経済の減速もありますが、日本企業の中国投資は2018年には前期比で大幅増となるなど、影響はまだ大きくはないようです。電力に関しての投資は、中国国内へというより、中国企業との投資協力として第3国の開発へ、などの可能性が高いかもしれません。いずれにせよ、海外への発電所建設などの実績も多い中国の動向は、見逃せないものとなっています。