各国の電力自由化状況

ヨーロッパ

フィンランド

伝統的にロシアと結びつきが強い資本主義国

 フィンランドはスウェーデンの東に位置する国で、国土面積は33.8万km2と日本よりひと回り小さく、人口は約549万人と約12分の1程度です。名目GDP(2018年)は2,753億ドルと世界41位で、北欧4国の中では最も少ないですが、1人あたりのGDPは世界15位の49,845ドルと高い水準にあります。歴史的に旧ソ連時代からロシアとの結びつきが強く、資本主義国家ながらソ連などの共産主義国家の影響を強く受ける、二重構造の政治を行ってきました。現在では国際企業も多く、先進工業国として発展しています。

資源が少なく、原子力に依存する電力

 フィンランドは自国で産出する資源がほとんどなく、石油はロシアからの輸入に頼っています。エネルギーの自立を求めた結果、電力の電源比率では原子力が高く、原子力34%、水力23%、バイオマスを中心とした再エネ22%、石炭が15%、天然ガスが5%となっています。このうちバイオマス発電は、豊富な森林資源を利用した木質チップなどが主体です。他の再生可能エネルギーとしては近年、風力発電が増えています。
 当初、フィンランド政府は2025年までに発電用の石炭利用を止めると発表しましたが、その後に達成困難であると修正されました。ただ、2030年には石炭火力発電所は1基のみになる予定です。
 一方で原子力への依存は強く、今後も比率は高くなる見通しです。

電力の自由化は90年代後半に完了

 フィンランドの電力事業は、1995年から98年にかけて段階的に自由化が行われました。1996年には電力取引所が開設され、1998年には国際電力取引市場である「ノルド・プール」へ参加。同じく1998年には小売電力市場が全面自由化されています。
 現在、発電部門では政府が株式の50%以上を所有するフォルトゥム社を筆頭に、フィンランド産業電力(TVO)、フィンランド北部電力(PVO)、ヘルシンキ・エネルギア、カミヨキのビッグ5が市場を占有しています。このうちフォルトゥム社は水力発電中心で国際的に企業展開を行っており、またフィンランド産業電力は、原子力発電を主体としています。フィンランド北部電力は、地方自治体などが共同出資により設立した企業です。
 送電部門に関しては、フィングリッド社が占有しています。また、1998年からは他の北欧諸国と同様、国際的電力取引市場のノルド・プールに参加しています。
小売事業者は、配電事業者と統合されており(会計は分離)、90社の事業者が存在しています。小売はフォルトゥム社のグループ会社やスウェーデンに本社があるバッテンフォールなどの大手3社が40%近いシェアを有しています。

電力産業への日本の参画は

日本からの投資は、再生可能エネルギー関係の出資も考えられます。資源に乏しいため、エネルギー開発関連の出資は少ないと思われますが、今後の動向が注視されます。