各国の電力自由化状況

ヨーロッパ

ノルウェー王国

スイスに次いで世界2位の福祉国家。EUには不参加。

 ノルウェーはスカンジナビア半島の北に細長く伸びる国で、国土面積は38.6万km2と日本とほぼ同じですが、人口は約532万人と約12分の1程度です。少ない人口ながら名目GDP(2018年)は4,349億ドルと世界29位で、1人あたりのGDPは世界4位の81,695ドル。スイスに次いで世界2位の高福祉国家として国民の満足度は非常に高く、必要がないという理由で、北欧4国の中では唯一EUに加盟していません。ただし、EUのルールに準拠した政策を行うなど、EUと密接な関係にあります。

水力発電が全発電量の96%、電力の1割は輸出されている

 ノルウェーは、高山にある湖が多く、水力発電に非常に適した国です。発電の電源も96%が水力、残り2%が天然ガス、風力を中心とした再生可能エネルギーが2%と、98%が再エネで占められています。
 一方で、ノルウェーは北海油田を中心に、石油、天然ガス資源が豊富な国でもあり、世界有数の原油・天然ガス輸出国として知られてもいます。
 しかし水力発電で十分に国内需要をまかなえるため、化石資源は発電には使われません。豊富な電力は、1割程度が他国へ輸出され、世界初の国際電力市場「ノルド・プール」を利用して、活発な取引が行われています。ただし、水力は水不足の乾季には発電量が不安定となるため、需要のピーク時には一部の電力を輸入に頼ることもあるようです。
 再生可能エネルギーが発電量の多くを占めるノルウェーですが、さらに2酸化炭素等の積極的な削減を進めています。特にEV(電気自動車)の利用が2010年頃から非常に増え、首都オスロでは2015年の新車販売の約3割がEVでした。コンパクトカーではすでに5割以上がバッテリー式の電気自動車になっています。

自由化もいち早く、国際電力取引市場「ノルド・プール」を開設

 ノルウェーの電力事業は北欧諸国の中でもいち早く自由化されました。1991年のエネルギー法可決により、国営電力会社(スタットクラフト)が送電会社(スタットネット)と発電会社(スタットクラフト)に分離されました。同時に小売の自由化も行われています。
 また1993年には公正な競争が行われるよう、卸電力取引所(スタットネット・マーケット)が開設されました。この取引所は、1996年にスウェーデンが加わり、世界初の国際電力取引市場「ノルド・プール」となりました。現在では、ノルウェー国内の電力の90%がノルド・プールで取引され、参加国は20に上っています。
 現在のノルウェーの電力業界は、2015年時点で発電事業者が183社あり、うち国営のスタットクラフトが36%を占めます。送電事業者は20社ありますが、90%のシェアを持つ国営のスタットネットが、今後すべてを買収する予定です。配電事業者は159ありますが、ほとんどは地方自治体が所有する企業です。また、小売事業者は100社程度あります。

電力産業への日本の参画は

 以上のように、ノルウェーはエネルギーに関しては非常に安定しています。ただ、今後は北海油田を中心に石油・ガス資源が枯渇していくとされ、2020年頃から輸出が減少するともいわれており、若干の不安が残されています。
 日本からの電力産業への参画は、出光興産の子会社・出光スノーレ石油開発が、自社が油田開発を行う石油生産設備に接続する、浮体式洋上風力発電の設置を2018年より行う、などの事業があります。上流開発の一環ですが、他にも再生可能エネルギーなどへの資本参加が期待できそうです。