各国の電力自由化状況

ヨーロッパ

ドイツ

ヨーロッパ1の経済力を誇るEUの牽引車

 ドイツは第2次世界大戦の戦敗国で、戦後は東西2国に分かれました。しかし1990年に統一を実現。ドイツ連邦共和国として、現在ではヨーロッパ1の経済力を誇り、EU(欧州連合)の1国として大きな存在感を示しています。
 国土面積は35.7万km2と日本よりやや小さい程度で、人口は8,280万人(2017年)とヨーロッパ最大の人口を有します。また、移民を多数受け入れており、ロシア人、アラブ人など1,000万人近い移民が国内で暮らします。
 伝統的に工業に強く、自動車や機械の有名メーカーが多数あり、名目GDPは4兆3億ドル(2018年)と日本に次いで4位。ヨーロッパでは群を抜く1位で、1人あたりのGDPも48,264ドルと高水準です。

電力事業は、再生可能エネルギーを非常に重視

 ドイツは国内にルール地方など有名な炭田を多数持っていましたが、安い外国産に押され、2018年に最後の炭田が閉鎖。現在では石炭の国内生産はありません。
 ただ、電力供給については、電源比率で石炭が43%と最も多く、次に再生可能エネルギーが27%、天然ガスと原子力が各13%、水力が3%となっています。
 国として、再生可能エネルギーを非常に重視する政策をとっており、発電量における再エネの比率を2020年に35%、2030年に50%、2050年には80%とする目標を立てています。

2022年には脱原発、2038年には石炭も全廃

 原発に関しては紆余曲折はあったものの、脱原発を決定。2022年までにすべての原子力発電所を稼働停止にすることとしました。石炭も2038年には全廃する目標を立てていますが、時期尚早だとして反対意見もあります。
 再生可能エネルギーは1991年に固定価格買取制度が導入され、増加が加速されました。ただ国民の負担も増え、1家庭で月2,600円、電気料金のほぼ4分の1が再エネ賦課金という状態になりました。2015年から競争入札制度を導入して負担減を目指していますが、電気料金はEUの中でも最も高い水準です。
 再生可能エネルギーの比率は、2018年で風力49%、バイオマス22%、太陽光20%、水力7%。特に今後は風力と太陽光発電に注力し、陸上風力発電は2017年以降年間280万kW、洋上風力は2020年には650万kW、2030年には1,500万kWを導入する予定。太陽光発電については年間250万kWを導入すると計画しています。

自由化で少数の大企業が寡占、しかし地域密着型のシュタットベルケも

 電力自由化については1998年に自由化が行われ、かつての大手電力会社8社に加え、新規事業者が100社以上参入。激しい競争の後に国際エネルギー企業による買収・統合が行われ、現在はE.ON、RWE、EnBW、バッテンフォール・ヨーロッパの4社の寡占状態となっています。
 ドイツでは発電事業は前述の4大企業とLEAG(ラウジッツ・エネルギー社)が4分の3のシェアを占め、送電事業はアンプリオン、50ヘルツ、テネットTSO、トランスネットBWの4社が大半を保持しています。
 その一方で、各都市にはシュタットベルケという、ガス・電力や水道事業も含めた昔ながらの都市公社が900社以上あり、地域密着型の経営で生き残っています。小売事業では、大手4社の比率は家庭用で3分の1程度です。ドイツの電力事情は、大手と地域企業の併存型といっていいでしょう。

ドイツ電力業界の今後は

 こうしたドイツの電力業界ですが、E.ON、RWEといった巨大エネルギー企業が、政府の再エネ重視への政策変化などにより、経営不振に陥っています。そこで最大手のE.ONは、火力などの従来型事業をユニパー社として分社化。またRWEは、再エネ事業をイノジー社として分社化した後、E.ONが同社株式を買収するなど、企業体制を再エネ対応に変えつつあります。
 日本からの参入は、主に再エネ事業への資本参加などが考えられます。ただ、大手エネルギー企業が業態を大きくシフトしている中、変化への対応が大きな鍵となると思われます。