各国の電力自由化状況

東南アジア

ベトナム

ベトナムは経済発展を続ける親日国

 ベトナムは最近、めざましい経済発展を遂げている国のひとつです。
 ベトナムの人口は9,370万人(2017年)、国土面積は32.9万km2と日本よりやや小さな規模です。
 GDPは2,235億ドル(2017年)、1人あたりGDPは2,385ドルと年率7%程度の成長を続け、2025年には人口1億人を突破するとされています。また、ベトナムは親日国のひとつであり、特に近年は日本にも外国人労働者として働きに来る人が増えています。2018年の厚生労働省の調査によると、日本での就労者は前年比で31.9%増の31万6,800人。中国に次いで多いとされています。

電力消費も年率6.6%で増加中

 そんなベトナムですが、人口増に伴って電力消費も年率6.6%のペースで増え、発電能力は過去10年間12%のペースで増強が続いています。
 ベトナムの電源構成比は、2015年当時は、豊富な水資源を利用した水力が42%で1位。続いて石炭29%、ガス21%、石油3%、再生可能エネルギー0.5%程度でした。ただ、水力は電力供給が不安定で、天候不順による水不足から発電力が下がることが多く、2020年には安定供給が可能な石炭火力を48%に増やし、水力を25%に抑える方針にしています。

ベトナムの電力事業は国営企業EVNが独占

 ベトナムでは、電力事業はEVNという国営電力公社が送配電から小売までを独占しています。各業務はEVN直轄の子会社が担当しており、電力取引はEPTC、給送電はNLDC、NPTCという企業が行っています。また小売部門は子会社の5社(HNPC、HCMC、CPC、SPC、NPC)が独立採算制で事業を行っています。
 ただ、発電事業のみについては外資を含む民営企業の参入が認められており、EVNが61%を支配しているものの、23%程度は民営企業の事業となっているようです。
 国営企業EVNは、かつて赤字でしたが、2013年に現首相の体制になってから、電力料金の段階的値上げを実施し、財務面が改善。現在の営業利益率は2%程度と低水準ながら健全経営を行っています。
 このようなベトナムの電力事業ですが、増大する電力消費に対して、発電能力の伸び率がまだ不足しています。前述の通り、水力は天候に左右されやすく、石炭・LNGなど火力発電用の資源に関しては、国内に産出田はあるものの、高品質なものは輸入に頼るという現状。原子力発電所も建設計画が廃止になっており、多くの悩みもまた、抱えているようです。

ベトナムの電力自由化は

 さて、ベトナムでも現在電力自由化が進められています。
 2012年には売電先こそ国営のEVNのみですが、電力取引を行うスポット市場を開設。
 また発電部門への外資参入も許可されました。
 将来的には電力の卸売市場にも(EVNの関連企業が中心ですが)一般の事業者や大口の需要家も参画させる予定です。
 電力の小売市場についても、2020年頃をめどに自由化を実施する予定です。

日本からの参入は

 発電部門への外資参入が認められ、今後小売部門についても自由化が進むであろうベトナム。すでに日本からは発電事業に、商社では三井物産、丸紅、住友商事、三菱商事、伊藤忠、豊田通商、双日、J-POWER、JERA、電力会社としては関西電力、九州電力、中国電力、東北電力、ガス会社としては東京ガス、大阪ガスが参画をしています。
 投資を行っている国別では、韓国が最大で2位が日本、3位以下にはマレーシア、シンガポールなどが続いています。

 今後、発電事業を主体に日本国内からの参入も増えると考えられますが、お国柄による省庁との交渉の長期化や、発電所建設に必要な土地買収・収用の長期化の問題、石炭やLNGなどの資源の輸入を担当する企業が自前で行わなければならないこと、さらに石炭が中心のため発電機導入時の外国、特に中国との競合などの問題もあります。
 ただし、こうした点を考え併せても、成長性や経済規模、親日国としての存在感など投資先としては魅力の多い国といえるのではないでしょうか。

【参考資料】