各国の電力自由化状況

東南アジア

インドネシア

人口世界第5位、G20にも参加する、世界最大のイスラム国家

 インドネシアは人口約2億6,189万人(2017年)。世界第4位の人口を有し、面積も191万km2と日本の5倍の広さがある島国です。人口・面積とも東南アジア最大で、ASEANの盟主ともいわれ、東南アジアでは唯一、G20に参加しています。
 また、国民の9割がイスラム教徒で、世界最大の教徒を抱えるイスラム国家でもあります。
 GDPは9322億ドル(2017年)と世界15位の規模を有し、経済成長率も6.9%と安定してますが、1人あたりのGDPは低く、国民の2人に1人が貧困層といわれます。
 日本との関係は良く、「世界一の親日国」とも言われます。日本企業からの投資も積極的で、日系企業は約2,100社にも上ります。

資源は豊富、発電は脱石油を目指し石炭に依存

 そんなインドネシアは、資源も豊富で石炭の産出量は世界5位、天然ガスは世界10位。
 石油も豊富に産出し、以前は日本などにも輸出を行っていましたが、現在は産出量が減少。国内での消費がほとんどで、2004年からは石油の純輸入国となっています。
 電力産業については、電化率は84.4~91.2%。最近になって向上していますが、まだ電気の通っていない家庭・地域が残されています。
 発電設備容量は5,466万kW。電源構成は2015年段階で、石炭52%、ガス23%、石油12%、地熱5%、水力8%。かつては石油火力が多かったのですが、国内生産力の低下から脱石油の「クラッシュプログラム」を計画。第1次クラッシュプログラム(2006~2010年)、第2次クラッシュプログラム(2015~2019年)では非石油系の発電所各1,000万kWの建設を進めました。
 ちなみに第1次は石炭系の発電所を中心に建設を進め、第2次は石炭に加え地熱などの再エネが重視されています。このプログラムにより、2021年度には発電量のうち、石油の割合をほぼ0にする予定です。また、再生可能エネルギーである地熱も11%に増強する予定です。
 こうして発電量が増える半面、人口増と経済発展に伴って、首都ジャカルタのあるジャワ島を中心に電力需要はますます増しています。電力設備の不足は今も深刻であり、電源確保が国の急務とされています。

インドネシアの電力業界と自由化

 インドネシアの電力業界では、政府が株式を100%所有する、国有電力公社PLNが発送電から小売まで、中心的存在として事業を行っています。
 かつてはPLNで独占状態にありましたが、2009年の新電力法の施行で、「国益を害さない限り、その他の国有企業、公営企業、民間、協同組合、市民団体は電力供給事業を実施するための機会を最大限与えられる」となり、民間企業の参入が促されました。地方政府(州)の権限も大きくなり、地方ごとに電力計画を策定したり、電気料金が設定できるようになっています。
 また、PLNの子会社が作られて分社化が進んでおり、ジャワ島やスマトラ島、バリ島などの中心部に限っては小売部門も民間に開放されるなど、徐々に自由化も進展しているようです。
 現状では、送配電部門はPLNの独占ですが、発電事業に関しては、PLNの子会社以外にIPP(独立系発電事業者)が参入しています。電力不足から、海外資本の参加も積極的に推奨されています。第1次クラッシュプログラムでの石炭発電所入札では、中国資本が多くを落札したといわれますが、建設の遅れなどにより不手際が頻発しており、今後は日本企業にもチャンスは多いと思われます。
 また第2次プログラムでは、再エネ強化のための地熱発電所建設も多く行われ、技術を持つ日本企業の参入も期待できそうです。

今後のインドネシアの状況は

 今後、インドネシア政府は、送配電網の建設を進め、2020年までに電化率を99%まで上昇させる計画です。不足している電力供給量に関しても、2015年の4,000万kWから2020年には倍の8,000万kWまで増強するとしています。発電所に関しても、燃料使用量が少なく2酸化炭素の排出量も少ない超々臨界圧石炭火力発電所(USC)の建設を計画するなど、積極的な増強が予定されています。
 他のASEAN諸国と同じく、発電インフラ整備を中心に、日本資本参入の余地があると考えられるでしょう。