各国の電力自由化状況

東南アジア

マレーシア

成長率は年5%程度で安定。2020年に先進国入りを目指す

 マレーシアはマレー半島の南部と海を隔てたボルネオ島北部を国土としています。面積は33万km2と、日本よりやや小さい土地の中に、3,239万人(2018年)が暮らしています。GDPは3,540億ドル(2018年)と世界35位。立憲君主制ですが、国王は国の各州にいる君主が5年ごとに回り持ちをするという珍しいシステムです。
 人口比率は、6割がマレー系、3割が中国系、1割がインド系で華僑が多く、中国と伝統的に密接な関係を持っています。
 近年、成長率は5%程度と安定しており、ASEAN諸国の中では優等生。産業は天然ガスやゴムなどの生産で有名でしたが、近年ではITなどハイテク産業の支援策を推し進め、2020年には先進国の仲間入りをするという「ワワサン2020」を掲げています。
 天然資源にも恵まれており、天然ガスや石油を産出しています。天然ガスは価格が安かったため一時期大量に使われて減り、現在は国内向けの発電にはあまり使われていません。

マレーシアの電力会社は、民間大手3事業者が分割統治

 マレーシアの発電設備容量は2,810万kW(2016年)。家庭の電化率もほぼ100%です。電源構成は2015年段階で、石炭47%、ガス46%、水力5%の比率で、石炭火力とガスが中心となっています。
 電力需要量についてはインフラが比較的整っており、供給も安定していて電気料金も日本より安価です。今は電力需要が急に増えることはなく、増加率は年平均で5%程度と、ASEAN諸国の中では落ち着いています。
 電力会社については、全土を大きく分けた3地域ごとに大手電力事業者があり、電力供給を行っています。マレー半島ではTNB(テナガナショナル社)、ボルネオ半島北東部のサバ州ではSESB(サバ・エレクトリシティ)、ボルネオ半島北西部のサラワク州ではSEB(サラワク・エナジー・バーハッド)の3社です。
 この3社が発電および送配電・電力小売事業までを一貫して行っています。送配電については、この3社が独占状態です。

電力の自由化は過去に中止に、発電事業のみが解放

 電力の自由化については、1990年代に発電・送電・配電の分離化が一度計画されました。しかし先行して分離化が行われたアメリカ・カリフォルニア州で、卸売電力の高騰などにより深刻な電力危機が発生した失敗を受け、2001年に中止が決定しました。
 一方、発電部門のみについては、1992年以降に自由化が行われ、2016年時点で国内資本を中心に24の発電事業者が営業を行っています。

マレーシアの今後の電力政策は

 マレーシアでは、2011~2015年の第10次マレーシア計画で、石炭やLNGの利用拡大を計画。また、従来の石炭火力より高温で運転し、効率が良く廃棄物も少ない超臨界石炭火力発電所の建設等を行うとしました。
 一方で、2021年までに原発2基の導入を計画していましたが、東日本大震災の福島原発の事故を受けて中断状態です。
 さらに、2016~2020年の第11次マレーシア計画では、石炭火力のさらなる利用拡大と、温室効果ガスの低減を目的とした再エネ電力の導入がうたわれ、2020年には電源比率が石炭63%、ガス28%、水力5%と石炭が伸びることが予測されています。

日本の電力業者の今後の参入は

 マレーシアの電力業界への海外資本の参入は、これまで発電事業のみで、出資比率も30%までと規制されており、IPP(独立系発電事業者)も国内の事業者が中心でした。
 ただ、今後は規制緩和も進むと見られ、特に再生可能エネルギーの発電においては、政府が注力を表明しており、日本企業の参入可能性もあると考えられます。

【参考資料】