各国の電力自由化状況

東南アジア

ミャンマー

長い軍政・鎖国から民主化。今後の経済発展に期待

 ミャンマーは人口5,562万人(2018年)、国土面積は67.6万km2と日本の約2倍。隣国のタイとほぼ同規模です。
 軍部による政権が続いた後に民主化し、2015年の総選挙でアウン・サン・スー・チー率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝。2016年に事実上のスー・チー政権(大統領は別)が誕生しました。
 かつての植民地時代は、アジアの中でも裕福な国とされました。しかし近年の軍政下で鎖国政策を長く行い、また児童の過酷な労働をはじめとする人権問題などで、欧米から経済制裁を受け、経済事情はASEAN諸国の中でも劣悪です。
 GDPは665億ドル(2017年)、1人あたりのGDPは1,264ドルと低水準(日本は3万8,348ドル)です。GDP成長率は7~8%とまだ勢いは足りませんが、民主化を評価したアメリカが2017年に経済制裁を解除したことなどで、今後の経済発展に期待が持てます。日本はODA援助などで長く支援を続け、また2012年からは電力などのインフラ開発で積極的な支援を行っています。

水力は乾季の水不足で能力半分に。課題多い電力事情

 ミャンマーの発電設備容量は538.9万kW(2016年)。国土が同程度のタイが4,156万kWであるのと比べて8分の1しかありません。電化率も37%程度と整備の遅れが目立ちます。
 電源構成としては、2015年で水力59%、天然ガス39%、石炭2%。水力が多いですが、乾季には水が枯れて半分程度の能力しか出せなくなり、電力不足があちこちで発生しています。また、資金不足のために火力発電所のプロジェクトが中止になったり、山間部では新しい発電所を建設しても整備体制が不十分なために多くが数年で故障するなど、問題は多くあります。

電力事業は発電事業のみ参画可能

 ミャンマーの電力事業はかつては国営のMEPE(ミャンマー電力公社)が統括して行っていました。2016年以降は、合併・分離などで発電事業はEPGE(発電公社)と水力発電所建設に関してはDHPI(水力発電建設局)、送電に関してはDPTSC(送電・系統運用局)、小売に関しては地区ごとにYESC(ヤンゴン配電会社)、MESC(マンダレー配電会社)、ESE(地方配電会社)の3社で供給が行われています。
 自由化に関しては、現状では他のASEAN諸国同様に、発電事業のみにIPP(独立系発電事業者)の参加が認められており、外資の制限なし、と積極的に導入を進めています。
 なお、電気料金に関してはASEAN諸国の水準より安く、そのため赤字採算となっています。

今後の電力事業と資本参入について

 2015年末には、初めて国際入札で事業者が選定された火力発電所の建設がスタートしました。落札したのはシンガポールのIPP企業ですが、電力は政府が買い取ることになります。ミャンマー政府は、2030年には発電事業の8割を国際入札で選んだIPPに行わせる意向を持っており、発電に関しては今後も外資系の参画には機会があると思われます。
 日本は、ODA援助により、ヤンゴンに隣接するティワラ港の電力インフラ開発や、水力発電所の改修などを手掛けています。よって今後も参入可能性は高いと見られます。