各国の電力自由化状況

東南アジア

ラオス

農業国だが、電力輸出で成長率をキープ

 ラオスは東南アジア諸国で唯一、海に接しない内陸国で、面積は23.6万㎞2と日本の約3分の2ほどの国土に人口668万人(2017年)が暮らしています。政治はラオス人民革命党の独裁政権で、市場経済化はしていますが、社会主義が続いています。
 GDPは2017年で170億ドルと少なく、1人あたりのGDPも2,542ドルで国民の半数以上が貧困層だと見られます。産業は農業が中心ですが、山と高原が多い国土を利用して、メコン川流域に水力発電所を多く建設しています。タイなどへの電力輸出も行い、「東南アジアのバッテリー」を目指しています。
 GDP成長率は2016年で6.8%で、外貨獲得のための電力輸出が、産業の大きな一角を占めています。

2030年までに200以上の発電所を建設中。問題は使い道

 現在の発電設備容量は637.3万kW(2016年)と、ミャンマーを超えた程度の水準です。電源は水力発電所がほぼ100%でしたが、2015年に石炭火力発電所が稼働をはじめ、2020年には水力が63%、石炭が36%まで上昇する見込みです。
 電化率は整備が進んでいて92.4%と高く、政府は2030年までに電化率98%とすることを目標に掲げています。
 「東南アジアのバッテリー」を目標とする同国ですが、現在はメコン川流域を中心に61ヶ所(2018年)の水力発電所が稼働中で、さらに中国資本を中心として2030年までに200ヶ所の水力発電所を作る計画が進んでいます。
 しかし、電力の多くはタイ、ベトナムなどの諸外国へ輸出されている上、発電所を作りすぎて余った電力を国内では消費しきれていません。その一方で辺境地域では送電網の不備などで電力が足りず、周辺諸国から輸入するなど、矛盾も現れています。また、発電所の建設費用を中国などからの借金でまかなっているため、負債の巨大化が心配されます。

小売事業は国営公社が主体、発電所や電力網整備に日本も参画

 電力産業については、国営のEDL(ラオス電力公社)が送配電などの電力事業を独占しており、小売などの自由化は行われていません。電気料金は、政府の認可によって決まり、基本料金はなく、電力使用量に応じた従量制です。
 ただ、発電事業については海外資本によるIPP(独立系発電事業者)を積極的に受け入れています。中国資本が中心ですが日本も参加しており、2019年には関西電力が45%の出資建設したナムニアップ・ダム水力発電所が稼働する予定です。ナムニアップダムは、日本の黒部ダムの1.5倍の発電量が予定されています。

発電所建設が次々に、日本からの参画も

 今後も水力発電を中心にIPPの参画が期待されるラオスですが、前述の通り、中国資本による発電所への投資が多くなったことで、中国への債務負担が増大することが懸念されています。2019年時点でも、新たなダム建設の見直しが一部で行われており、水力発電所の作り過ぎなどの問題の解消が今後望まれます。