各国の電力自由化状況

東南アジア

タイ

古くからの親日国で、日系企業の数はアジア有数

 ベトナムほどの勢いはないとはいえ、タイも経済発展を続けている国です。
 タイ王国は人口約6,910万人(2017年)、面積は51.4万㎞2で、日本の約1.4倍。国王を元首とする立憲君主制ですが、軍部の権力が強く、たびたび軍事クーデターが起きます。2014年にもクーデターで軍事政権が樹立され、陸軍司令官のプラユットが首相になりました。
 政情が不安定といえるタイですが、経済面では発展が続き、GDPは4,557億ドル(2018年)と世界25位の規模。経済は活発で、2050年まで年率3.1%程度の成長が続くとも予測されています。
 古くからの親日国でもあり、タイにある日系企業の数はアジア有数でもあります。

タイの電力は国営のEGATが独占

 こうしたタイの電力は、発電設備容量約4,200万kW(2017年)。
 電源構成は、天然ガスが主体で60%、石炭18%、再生可能エネルギーが9%。残りの12%は隣国のラオスなどからの輸入に頼っています。また、再生可能エネルギーの内訳は水力30%、太陽光15%、バイオマス50%となっています。
 電化率も高く、国内の99.9%と、ほぼすべての家庭やオフィスで電気が使えます。
 電力会社は、国営のタイ発電公社(EGAT)が送配電・小売までを独占しています。
 ただ、発電事業のみは自由化が行われており、1992年からIPP(独立系発電業者)や9万kW以下の小規模発電事業者の参入が解禁。2002年には1,000kW以下の再エネ発電業者に売電割増金の支給制度が開始されました。
 電力事情では、経済の中心である南部で深刻な電力不足が起きています。南部は電力需要の伸び率も最大なため、現状ではタイ中部やマレーシアからの購入で補てんされているのが現状です。電力不足の解消のため、石炭火力発電所の建設計画が立てられていますが、周辺住民の反対などで計画は頓挫しています。

タイの電力事業の今後は

 タイの電源開発計画(PDP2015)では、2036年までに電力需要は平均で年2.67%増加すると予測。発電設備の容量を現状のほぼ倍の7,033万kWにするとし、また海外からの電力輸入は発電量全体の20%を超えない量であるとしました。
 その増加分は、約5,746万kW分の発電所の新造などで賄うとしています。特に有力とされているのは石炭火力発電所の建設で、今後、電源構成における石炭の比率を上げるとしています。
 電力の自由化については、小売事業はEGATの独占体制は継続するものの、発電事業についてEGATの独占体制を改めるとの姿勢を示しています。
 日系企業は古くからODA援助などで、タイに石炭発電所を建設するなどの実績を持っています。現在の発電事業に関しても、J-POWERがタイ全体で発電する電力の10%にあたる330万kWの発電所を稼働するなど、IPPとして大きな存在感を持っています。
 今後も、タイでの電源開発に関して、さらなる日本の関与が期待できそうです。