各国の電力自由化状況

ヨーロッパ

スウェーデン王国

北欧4国の中で経済規模は最大。福祉先進国としての顔も

 スウェーデンは、スカンジナビア半島の東部に位置する「北欧4国」のひとつです。国土面積は44.7万㎞2と日本より25%ほど大きく、人口は1,026万人(2019年)が暮らします。名目GDPは5,511億ドルと世界23位で北欧4国の中ではトップ。1人あたりGDPは53,873ドルと高く、他の北欧諸国とともに福祉先進国として知られます。政治は立憲君主制で民主的な政治が行われています。

北欧らしく水力発電が多い。原発廃止は据え置き

 スウェーデンには石油・石炭などの化石資源は少なく、石油や天然ガスは輸入に依存しています。しかし、北欧諸国に共通する特徴として、水資源が豊富で水力発電が発達しています。
 発電の電源については、原子力と水力が40%ずつ、再生可能エネルギーが17%で、石炭・天然ガスは1%程度です。
 再生可能エネルギーの導入には積極的で、水力も合わせると57%が再エネです。特に風力が再エネ全体の60%以上を占め、また森林資源を活用したバイオマス発電も多くあります。再エネへの保護も手厚く、グリーン電力証書制度を始めとして、再エネ発電所への環境税の免除なども行われています。
 原子力に関しては、米スリーマイル島原発の事故を受け、1980年には原発の廃止を2010年までに決定しました。しかし再エネなどへの転換が思うように進まなかったことや、産業界などの反発もあり、原発の廃止を凍結。建替えに限っては原子炉の新規建設を認める決定を行っています。
 スウェーデンでは2040年までに発電量の100%を再エネでまかなうという目標を立てていますが、先の原子力の問題などから、実現性は未知数といえるでしょう。

電力小売自由化が進み、1年で1割の需要家が企業変更

 スウェーデンの電力事業は、1990年に再編が行われ、当時の国家電力庁が国有企業のバッテンファル社に民営化。送電部門が切り離され、スペンスカ・クラフトナート社が設立されました。1996年には、小売電力の自由化も行われ、また卸電力部門では、ノルウェーで開始された国際電力取引所「ノルド・プール」に加盟し、自由化を達成しています。
 現在のスウェーデンの電力事業は、発電部門については大手3社、国有のバッテンファル社をはじめ、フィンランドのフォルトム社、ドイツE.ONの子会社E.ONスウェリーゲ社が全発電量の73%を支配しています。
 送電部門のみは、前述のスベンスカ・クラフトナート社がすべてを統括運用しています。
 配電部門は、大手のバッテンフォールとE.ONスウェリーゲ社の他に、各地域の公営配電会社が200社程度あります。小売業者は大手3社の他、120社程度あります。
 スウェーデンの自由化は他国に先がけて早く、また現在でも1年で全需要家の1割程度が、小売電気事業者の変更を行うとされます。

電力産業への日本の参画は

 日本からの事業参画では、ソフトバンクの孫社長が設立した自然エネルギー財団に、スウェーデンの元エネルギー庁長官が就任。ソフトバンクがスウェーデンの再エネ関連企業への投資などが行われています。日本からは遠い国ですが、再エネ技術への投資中心にビジネスチャンスが生まれる可能性はあるかもしれません。